乱れる    1964年(昭和39年)       邦画名作選
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夫に先立たれた礼子は、嫁ぎ先の酒屋を一人で切り盛りしていた。
だがスーパーマーケットの進出で商店街にかつての賑わいはない。

ある日、礼子は東京の会社を辞め帰郷した義弟・幸司に想いを告白される。
幸司の気持ちに揺れ動く礼子は、家を出る決意をするが…。


戦争で夫を失った未亡人・礼子(高峰秀子)と、夫の弟(加山雄三)との道ならぬ恋の物語。
年の離れた義弟からの告白に、平凡な日常が、封じ込めたはずの女の情念が、千々に乱れる。

悲恋の果てに二人は、山形県銀山温泉を訪れる。しかし礼子にはまだためらいが残っている。
彼女は結局、義弟に身を任せる覚悟ができなかった。

それは、戦前から受け継がれた日本女性の道徳観念と、自らの激しい情念との相克であった。

その夜遅く、酒を飲みに出掛けていた義弟・幸司は足を滑らせ、崖から落ちて死ぬ。
一夜明けた翌朝、温泉の湯気が立ち籠める温泉街を戸板に乗せられて運ばれる幸司の遺体。

礼子は、戸板で運ばれる幸司を追いかけるのだが、遂に追いつくことなく立ちすくむ。
幸司の死が、事故なのか自殺なのか、何も語らないままに物語は終了する。

高峰秀子はこのとき四十歳、まだ十分に美しかった。
加山は二十六歳、すでに若大将シリーズの、さわやかで明るい人格としての人気が高かった。

しかし本人はそれが不満だったのだろう、成瀬作品への出演を自身で強く希望したという。
成瀬の演出を得て、義姉への秘めた恋心を見事に演じた本作は、名実共に加山の代表作となった。



  製作  東宝
  監督  成瀬巳喜男

  配役    森田礼子 高峰秀子 義妹・久子 草笛光子 義母・しず 三益愛子
      義弟・幸司 加山雄三 義妹・孝子 白川由美 幸司の恋人 浜美枝

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