無法松の一生 1943年(昭和18年) 邦画名作選 |
日露戦争の頃、小倉の町に松五郎(阪東妻三郎)という人力車夫がいた。
喧嘩っ早く、無鉄砲なので無法松と呼ばれていた。
あるとき松五郎は、竹馬から落ちて怪我をした少年・敏雄を助ける。
その縁で、少年の父親・吉岡大尉とその夫人(園井恵子)を知る。
が、吉岡大尉は、風邪をこじらせあっけなく死んでしまう。
このときから松五郎は、母一人子一人の吉岡家に、心から尽くすようになる。
1939年文芸雑誌「九州文学」に掲載された岩下俊作の小説「富島松五郎伝」の映画化。
稲垣浩が日活で制作した前作「海を渡る祭礼」と同じく、ある女性のために命がけで
献身する男の純情を描いた作品である。
初めての現代劇となった阪妻は、全く違った役者を思わせる豊かな演技を披露している。
戦争の真っ最中に、この作品は制作されたのだが、多くの重要なシーンが検閲によって、
削除されてしまっている。
例えば、物語の終盤、松五郎が吉岡夫人に愛を告白する10分程度の場面がカットされている。
陸軍将校の未亡人に、無頼の輩が恋慕の情を抱くなど以ての外、という理由であった。
本作に限らず、戦前は軍部の検閲によって、多くの作品の重要な場面が大幅に削除され、
元の作品の味わいは、伺うべくも無くなってしまっている。
製作 大映
監督 稲垣浩 原作 岩下俊作
配役 | 富島松五郎 | 阪東妻三郎 | 結城重蔵 | 月形龍之介 | |||||||||
吉岡小太郎 | 永田靖 | 宇和島屋 | 杉狂児 | ||||||||||
夫人よし子 | 園井恵子 | 撃剣の先生 | 山口勇 | ||||||||||
吉岡敏雄 | 沢村アキヲ | 巡査 | 葛木香一 |