大番 1957年(昭和32年) 邦画名作選
昭和二年の夏、宇和島の貧農の子として生まれた丑之助は、身ひとつで上京する。
富豪の令嬢、可奈子に恋文を渡したことが村中に知れ渡り、夜逃げする羽目になったのだった。
東京で株屋の小僧になった彼は、大飯食いで愛嬌のある「ギューちゃん」と呼ばれるようになる。
やがて頭角を現して金回りが良くなり、待合女中のおまきといい仲になった彼だったが…。
週刊朝日に連載された獅子文六の大衆小説を題材に、千葉泰樹が映画化した痛快人情劇。
昭和前期の兜町を舞台に、相場師「ギューちゃん」の波乱万丈の生涯を描いた一代記である。
ギューちゃんは学は無いが、相場師としての勘と粘り強い性格で、たちまち大金をつかむ。
そんなギューちゃんの才能を見込んだおまきは、彼を自宅に下宿させ何かと面倒をみる。
おまきを演じる淡島千景は、主人公を引き立てるしっかり者の女房役として抜擢された。
ギューちゃんは株のことと、宇和島時代からの憧れの令嬢、可奈子さんしか頭にない。
そんな彼を、健気にも、陰に日向に支え抜く男の理想とする女性像を具現化したような役柄である。
この作品のために生まれてきたようなギューちゃん役の加東大介だが、相手役に淡島千景を得て、
ずいぶん得をしたなあと思わせるものがある。
彼女はそれだけ情が深く細やかな女優なのである。
製作 東宝
監督 千葉泰樹