パパと呼ばないで 1972年(昭和47年) ドラマ傑作選
独身男の安武右京は、亡くなった姉の一人娘・千春を引き取ることになった。
右京の両親はすでに他界していて、ほかに頼る肉親もいない。
二人は、佃島の米屋・井上精米店の2階に下宿することにした。
子育てなどおよそ縁のない人生だと思っていたところへやって来た6歳のチー坊。
はじめは子供の扱いがわからず、とまどう右京だったが、次第に情が通うようになり、
チー坊はかけがえのない存在になっていった。
もじゃもじゃ頭の石立鉄男が演じる新米パパは、人情もろいが、時にイライラを爆発させる。
甲高い声で喜怒哀楽を全身で表現する二枚目半ぶりは、彼ならではのキャラクターであり、
個性派俳優として、ドラマの中で、ひときわ存在感を放っていた。
また、チー坊を演じた杉田かおるは、この作品で一躍、天才子役として注目を集めることになった。
彼女の演技力は、名優ぞろいのキャスティングにあって、一歩も引けを取らないどころか、
大人たちを完全に食ってしまった感さえある。
本作は、独身男の右往左往ぶりと、下宿先の人々の情の深さに泣き笑いしながら、急ごしらえの「親子」が、
強い絆で結ばれていく姿がコメディ・タッチで描かれる、まさに人情喜劇の傑作となった。
(制作)日本テレビ(NTV)、ユニオン映画(監督)千野晧司(脚本)松木ひろし、向田邦子
(配役)安武右京(石立鉄男)橋本千春(杉田かおる)橋本豊子(長内美那子)内田(江守徹)治子(富士真奈美)金造(花沢徳衛)
井上精太カ(大坂志郎)妻 時枝(三崎千恵子)長女 園子(松尾嘉代)次女 和子(有吉ひとみ)長男 昇(小林文彦)由美(井上れい子)