山椒大夫 1954年(昭和29年) 邦画名作選 |
平安末期、越後を旅していた母子連れは、人買いに騙され生き別れにされる。
母親と離れ離れとなった厨子王と安寿の兄妹は、丹後の豪族・山椒大夫のもとに売られてしまう。
奴婢となった二人は過酷な労働を課せられながらも、母親との再会を望む日々を送る。
それから十年、大きくなった二人は依然として奴婢の境遇のままであった。
ある日、新しく買われた奴隷が口ずさむ唄に、自分たちの名前が呼ばれているのを耳にする。
由来を聞けば、子供を攫われた自分たちの母親の叫びである事を知り、二人は脱走を決意する。
1915年「中央公論」に掲載された森鴎外の同名小説を溝口健二が映画化。
母親と引き裂かれた厨子王と安寿は「奴婢」にさせられてしまう。
母親は佐渡へ遊女として売られてしまう。
だが、母親はぼろぼろになりながらも生きることをあきらめなかった。
その生へのエネルギーは、子供との再会という切なる希望であった。
山椒大夫演ずる進藤英太郎のいかにも憎々しげな演技。
安寿役の香川京子の凛とした美しさ。
そして何よりも、老いさらばえた姿となっても、二人の子供を思う気持ちだけで
生き伸びようとする田中絹代の「感涙流るるばかり」の名演が光る一篇である。
製作 大映
監督 溝口健二 原作 森鴎外
配役 | 玉木 | 田中絹代 | 山椒大夫 | 進藤英太郎 | |||||||||
厨子王 | 加藤雅彦/花柳喜章 | 平正氏 | 清水将夫 | ||||||||||
安寿 | 榎並啓子/香川京子 | 太郎 | 河野秋武 | ||||||||||
姥竹 | 浪花千栄子 | 曇猛律師 | 香川良介 |