すみだ川 1942年(昭和17年) 邦画名作選 |
明治十五年、春。菊野(川崎弘子)は、将来を期待され、琴の稽古に励んでいた。
しかしある時、寄席で琴を弾いたことが、師匠の逆鱗に触れ、破門されてしまう。
やむなく、寄席を世話してくれたお豊(忍節子)の許へ身を寄せた。
その後、何かと支えてくれる近所の藤次郎(上原謙)に、菊野は心を寄せる。
だが藤次郎は、元やくざであり、警察に追われる身であった。
思い余った二人は、駆け落ちを決心するのだが…。
上原謙を相手役に、川崎弘子が、しっとりした情緒あふれる好演を見せている。
原作は、川口松太郎の同名戯曲で、いわゆる「明治もの」と呼ばれる新派悲劇。
物語は明治中期、琴の名手・菊野は、母の病で困窮し、片手間に寄席で琴を弾く。
だが師匠の怒りを買って破門され、その後、様々な苦労を重ねつつ生きていく。
そうした当時の薄幸な女性の風情を演じさせて絶品だったのが川崎弘子だった。
常に不幸な嵐に身を震わせて耐える健気さで、観客の涙を大量に絞ったのである。
今でもたまに、NHK朝の連続ドラマなどで「明治もの」が取り上げられるようだ。
こうして現在に至るまで新派悲劇が古びないのは、貧富格差や男女格差といった
社会の問題が、いまだに解決できずにいるからだとも言えよう。
製作 松竹
監督 井上金太郎 原作 川口松太郎
配役 | 八橋菊野 | 川崎弘子 | 土尾友蔵 | 斎藤達雄 | |||||||||
今井藤次郎 | 上原謙 | 妻・千世 | 岡村文子 | ||||||||||
菊岡芦風 | 藤野秀夫 | 娘・葵 | 春日美子 | ||||||||||
妻・筆 | 吉川満子 | お豊 | 忍節子 | ||||||||||
田中子遊 | 坂本武 |