旅は青空   1932年(昭和7年)     邦画名作選
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緑したたる初夏、通称山六とよばれた山六三郎(片岡千恵蔵)、それにホロ権、板万という三浪士は、

いずれも持って生まれた楽天家。このたびあてもなく、放浪三昧の旅に出たが、ふとした出来心から、

旅から旅へ流れる女芸人の一行に紛れ込んでしまった。


芸人一座の見世物に興じる三浪士の前に現れたのは、一座の花形おろく(伏見直江)に邪な想いを

抱いた悪徳役人(瀬川路三郎)であった。

三浪士が腕を振るって、彼女の身辺を警護したのは勿論だが、これが返って事件を大きくしてしまい、

ヤクザの嫌がらせ、見世物小屋への放火など、悪徳役人の悪辣な手段が執拗に一座の上に延びてきた。


だがこうした事件のために、三浪士と彼女たちは次第に親密となり、ほのかな恋も芽生えたのだった。

しかし残念ながら、それは長続きしなかった。というのは、彼らはサムライであり、彼女たちは所詮

旅の女芸人でしかなかったからである。女旅芸人たちと一緒に生きていくわけにはいかなかったのだ。


紛争は解決し、村はずれの並木道で別れることになり、無理に手を振って彼女たちを見送った。

それでも三人の浪士たちの心の中は、今日の青空のように晴れ晴れとした気分であった。




千恵蔵プロのトレードマークとも言える明朗時代劇。三人の浪人者と旅の女芸人との間に通い合う人情とロマンス。

それを軽快でユーモラスに繰り広げている。


主題歌付きのトーキー第一作で、監督は稲垣浩。録音設備の不備を考えて、出来るだけストーリーを単純化し、

主題歌「旅は青空」(野口雨情作詞、松平信博作曲)のメロディに乗せて、青空にうかぶ白い雲の二ひら三ひら、

あるいは雨に濡れるテルテル坊主など、そんなスケッチに稲垣浩らしい淡い感傷をにじませた小品である。




 
 
 

  製作   千恵蔵プロ   配給  日活

  監督   稲垣浩

  配役    山六三郎 片岡千恵蔵 水芸師おろく 伏見直江
      母衣(ホロ)権之助 成松和一 手品師おかね 浜口富士子
      板倉万太郎 田村邦男 呼びこみおきん 田中筆子
      座長おとく 常盤操子 悪徳役人 瀬川路三郎

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