丹下左膳 妖刀濡れ燕(つばめ) 1960年(昭和35年) 邦画名作選
年に一度の三社祭、お馴染みのとんがり長屋に住む丹下左膳。
だが長屋の子供たちは、祭りに着ていく着物も小遣いもなく、寂しい思いをしている。
子供たちの様子をみかねた丹下左膳は、道場破りで金を稼ごうとするのだが…。
林不忘原作、小国英雄脚色、松田定次監督、大友柳太朗主演の「丹下左膳」シリーズ第三作。
映画の冒頭は道場破りのシーンである。
左膳が金稼ぎのために、ある道場へ入ったところ、道場主は病いに伏せ、師範代も不在であった。
やむなく帰ろうとすると「私がお相手します」と、道場主の娘・萩乃がナギナタを構えて出てくる。
あっけにとられているすきに、萩乃の一撃で尻もちをつき、すごすごと逃げ帰った丹下左膳。
実はこのとき、左膳は萩乃に一目ぼれしてしまったのだが、彼女のほうは勝気で気位が高い。
大友の左膳は豪快だが、どこか人間味に溢れており、映画では、自分の隻眼隻手の醜い姿に
劣等感を抱き、美しい女性に憧れる切ない心情がうまく描かれている。
丹下左膳といえば、大河内伝次郎の戦前の当たり役だが、本作ではその大河内も蒲生泰軒役で
出演しており、当時は「先輩左膳と後輩左膳の共演」などと、映画雑誌で話題になった。
また東映では、大友と大川橋蔵が個人的に親しく、シリーズ四作すべてに橋蔵が助演している。
逆に「新吾十番勝負」シリーズでは、大友が新吾の父・将軍吉宗の役で助演をしている。
製作 東映
監督 松田定次 原作 林不忘