鶴八鶴次郎 1938年(昭和13年) 邦画名作選 |
時は大正。三味線弾き・鶴八(山田五十鈴)と、講談師・鶴次郎(長谷川一夫)。
鶴次郎が鶴八の母の弟子だった縁で、二人は幼馴染。鶴八鶴次郎の名で、名コンビとして人気を集めている。
だが、楽屋に戻れば、些細なことで大喧嘩。鶴次郎が啖呵を切れば、気の強い鶴八もカチンとくる。
それでも、しぶしぶ揃って舞台に出ると、お客の拍手を浴びて、今度はほくほく笑顔で楽屋に戻って来る。
毎度こんな調子で、周囲は呆れながらも、微笑ましく見守っている。
そんなある日、鶴八と鶴次郎は、母の法事をきっかけに、互いの思いを告白する。
けれど、二人の幸せな未来を損ねたのは、鶴次郎の短気からだった…。
卵に目鼻を載せたような日本美人の山田五十鈴が、最も美しかった頃の作品。
女優としては、本作や「歌行燈」で見せた、芸の化身のような演技で知られている。
彼女は、10歳で清元の名取となったほどの芸事の天才少女で、本作「鶴八鶴次郎」では
三味線と長唄を、「歌行燈」では、能の舞を披露している。
まさに「才色兼備」という言葉は、山田五十鈴のためにあると言っても過言ではない。
本作は、大正時代の東京が舞台、三味線弾き語りの芸人男女が喧嘩と恋を繰り返す物語。
監督は、人生の「やるせなさ」を描かせたら天下一品の成瀬巳喜男である。
そのため主人公の男女二人は、結局結ばれず、悲恋に終わるだろうと分ってしまうのだ。
あまりにも結末が見えすいているので、本作はいわゆる「駄作」と言ってもよいほどで、
ただひたすら、当時21歳の山田五十鈴の美貌と演技を眺めるためだけの作品と言えよう。
製作 東宝
監督 成瀬巳喜男 原作 川口松太郎
配役 | 鶴次郎 | 長谷川一夫 | 佐平 | 藤原釜足 | 松崎 | 大川平八郎 | |||||||||||||
鶴八 | 山田五十鈴 | 竹野 | 三島雅夫 |