駒十郎率いる旅回りの一座は、大した客入りも期待できない田舎で幕を開いた。
案の定興行は不振だったが、一座の親方・駒十郎は気にもかけない様子。
今日ものんきに、地元の青年・清と釣りを楽しんでいる。
これを不審に思ったのは駒十郎の連れ合い、すみ子。
一座の綺麗どころ加代に袖の下を渡し、清をたらしこんで内情を探るよう頼んでみたのだが…。
志摩半島の港町が舞台。旅廻りの一座とそれを取り巻く人々の様々な人間模様や恋を描く。
旅一座の座長を演じるのは中村鴈治郎。京マチ子、若尾文子といった女優陣が花を添える。
ラストシーン。駅の待合室でタバコをとり出す鴈治郎に、マッチの火を差しだす京マチ子。
一時は喧嘩別れした二人の、おかしくもほのぼのとした掛け合いが見せ場のひとつである。
人間と人間の間に存在するさまざまな感情が、淡々とした空間の中に丁寧に描かれている。
小津ならではの、ゆるやかな時間の流れと独特のセリフ回しは、大映製作の本作でも健在。
製作 大映
監督 小津安二郎
配役 | 嵐駒十郎 | 中村鴈治郎 | 本間清 | 川口浩 | 相生座の旦那 | 笠智衆 | |||||||||||||
すみ子 | 京マチ子 | 母お芳 | 杉村春子 | 吉之助 | 三井弘次 | ||||||||||||||
加代 | 若尾文子 | 小川軒のあい子 | 野添ひとみ |