わが町   1956年(昭和31年)       邦画名作選
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フィリピンの道路建設で一旗揚げた佐度島他吉が、人力車と風呂敷包み一つで故郷の大阪に戻って来た。

他吉は、女房のお鶴が四歳の娘を抱え苦労していると知り、彼女のために働き始める。

やがてお鶴は長年の苦労から病に倒れ、他吉の鉄火ぶりを案じつつ息を引取る。


人力車一筋に、男手ひとつで育て上げた娘も立派に成長し、桶屋の新太郎と結婚することになる。

だが過酷な労働に耐えることを人生の誇りとする他吉は、新太郎に、フィリピンへ出稼ぎに行かせる。

身重な娘を庇い稼ぎまくる他吉のもとに、ある日フィリピンから新太郎の病死の報せが届く…。



子供ができた妻を残し、フィリピンに出稼ぎにいく亭主の悲惨な運命が繰り返し描き出される。

同じ過ちを繰り返して自覚のない人間の愚かさをシニカルに炙り出した、川島雄三渾身の一作。

主人公・佐度島他吉に辰巳柳太郎、また南田洋子が他吉の妻と孫の二役を演じ話題となった。



 
 製作  日活

 監督  川島雄三     原作  織田作之助

  配役 佐度島他吉 辰巳柳太郎 孫君枝 南田洋子         桂〆団治    殿山泰司 
  妻お鶴 南田洋子 曾木新太郎 大坂志郎         おたか    北林谷栄 
  娘初枝 高友子 花井次郎 三橋達也              

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南田洋子と川島雄三


女性の魅力を最大限に引き出す名手であった川島雄三は、当然ながら多くの女優に愛されていた。


川島作品の「わが町」から四作続けて出演した南田洋子が、当時の川島への恋心を告白している。

川島への思いを募らせていた彼女は、川島の好物の梅干を携えて住まいの日活アパートを訪れた。


だが当時の川島は内縁の奥さんと同棲しており、その奥さんがアパートの入口で南田を出迎えた。

奥さんと鉢合わせした南田は大ショック、梅干しを渡すのが精一杯で、早々に逃げ帰ったという。