夫の両親と四人で暮らす菊子は、子宝に恵まれないが、貞淑な妻であり、良き長男の嫁だった。
ところがある日を境に、夫が外に愛人を作り、両親と菊子の心労は募ってゆく…。
川端康成の同名小説を、水木洋子が脚色、成瀬巳喜男が演出・監督したもの。
不義な夫にひたすら尽くし、自らの幸せをも放棄してしまう妻を原節子が演じている。
原節子は「めし」以来の上原謙との共演なのだが、あまり仲のいい夫婦ではなく、
むしろ義父の信吾（山村聡）との心の交流がドラマのメインとなっている。
夫の修一（上原）は、妻菊子（原）と結婚して数年しか経っていないのに愛人を囲っていた。
愚痴もこぼさずじっと耐える菊子を、義父の信吾は不憫だと思ってなにくれと優しくする。
菊子はおとなしい女で、夫に愛人がいる以上はと妊娠したのに堕ろしてしまうのである。
そんな不幸な嫁を見て、人生の無残さを感じた父は、ますます菊子が不憫になる。
またそういった父の態度が、いっそう息子の妻に対する態度を歪めてしまうのだった。
最終的に、菊子が自ら決断をすることで物語は大きく転換する。
物語のラスト。修一との離婚を覚悟した菊子に、歩きながら、義父の信吾が語りかける。
「電話で君の明るい声を聞いてほっとした。あれが本当の菊子の声なんだね…」
自分の想いを口に出せず、言いあぐねていた菊子だったが、この義父の言葉を聞いて
心の迷いは消え、修一と別れることを告げるのである。
製作 東宝
監督 成瀬巳喜男
| 配役 | 尾形菊子 | 原節子 | 尾形信吾 | 山村聡 | 谷崎英子 | 杉葉子 | |||||||||||
| 夫・修一 | 上原謙 | 妻・保子 | 長岡輝子 | 絹子 | 角梨枝子 |
