誘惑   1948年(昭和23年)       邦画名作選
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代議士の矢島は、かつての恩師の墓参りで、亡き恩師の娘・孝子に出会う。

孝子の学業と生活を助けるために援助を申し出た矢島は、自宅に孝子を引き取る。
孝子は住み込みで、子どもたちの家庭教師を務め、すぐに矢島家に溶け込んでいく。

矢島と孝子の間に愛が芽生えるのにさほどの時間はかからなかった。
しかし、矢島には、胸の病いのため海辺の療養所にいる妻・時枝がいた。



妻子ある男の誘惑に、悩みながらも次第に惹かれる女学生の心模様と葛藤を描く。

女性映画の巨匠・吉村公三郎と脚本家・新藤兼人の名コンビによる不倫ドラマの傑作。


不倫の恋が成就してハッピーエンドに終わるというとんでもないストーリーである。
しかしそれが真の恋愛・結婚を掴むことであれば、その見極めはかなり難しいことになる。

理屈ではどうにもならない、人間の恋愛感情を、吉村公三郎が巧みな心理描写を駆使して演出。
道ならぬ恋でありながら、己の幸福を堂々と選択する女性像を、原節子が鮮やかに演じている。

彼女の不倫なら許せると思わせてしまうのも、原節子たる所以か、それとも演出の妙か。



 
  製作  松竹

  監督  吉村公三郎

  配役 人見孝子 原節子 長女直子 芳丘直美
  矢島隆合 佐分利信 長男秀雄 河野祐一
  妻・時枝 杉村春子 武田三郎 山内明

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