華岡青洲の妻   1967年(昭和42年)     邦画名作選
直線上に配置                                      


華岡家に嫁いだ加恵(若尾文子)は、夫の雲平(市川雷蔵)が京都へ遊学中だったため、

彼の母である於継(高峰秀子)と二人で楽しく暮らしていた。


しかし雲平が戻ると於継の態度が急変、於継は加恵を押しのけ雲平の世話を焼き始めた。


名を青洲と変えた雲平は麻酔薬の研究を重ね、ついに人体実験を行うところまで来た。

於継が自分を実験に使ってほしいと申し出たのを聞いて、加恵は逆上。

自分こそ実験台にふさわしいと訴えるのだった。



1967年度女流文学賞を受賞した有吉佐和子の同名小説を新藤兼人が脚色、増村保造が監督。


本作は、初めて麻酔薬を作った紀州の医師・華岡青洲の妻と母の「嫁姑戦争」を描いている。

二人は青洲のため、先を争うように人体実験の被験者となる。


だが、一番恐ろしいのはそんな二人を止めもせず、淡々と人体実験を続けた青洲その人だ。


監督の増村保造は、ドラマになり易い嫁と姑の対立よりも、敢えて華岡青洲という人物像を

物語の中心に据え、彼の凄まじいバイタリティと強烈なエゴイズムを描ききった。


青洲を演じた市川雷蔵の存在感が素晴らしく、一見、真面目で妻にも母にも優しい人柄に

見えながら、心の奥では、自らの医学的成功のためには、二人の犠牲も止む無しといった

冷酷な心の持ち主である人物を見事に演じている。


雷蔵の熱演もさることながら、嫁姑に扮した若尾文子と高峰秀子の女の闘いが熾烈を極め、

それが珠玉の演技対決として、狭間に立った雷蔵を盛り立てることになったともいえよう。



 
 
 製作   大映

  監督   増村保造  原作  有吉佐和子

  配役    華岡青洲 市川雷蔵 乳母・民 浪花千栄子
      妻・加恵 若尾文子 小陸 渡辺美佐子
      母・於継 高峰秀子 於勝 原知佐子
      父・直道 伊藤雄之助 語り手 杉村春子

直線上に配置