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孔明との会見の席上、劉備は今後、自分はいかなる道を進むべきかと単刀直入にたずねます。
一国の国主であり、漢室の一門である劉備が、かくも真剣かつ率直に自分の意見に耳を傾けようとしている。
感激した孔明は、滔滔と持論の 「天下三分の計」 を語りはじめました。
話し終わり、自分の進むべき道を明快に提示された劉備は、孔明の出馬を懇請します。
しかし、晴耕雨読の生活に慣れ、世に出ることを嫌っていた孔明は、劉備に背を向け、頑なに断るのでした。
孔明に協力してもらえない劉備は悲しくなり、ひざまづいて、頭を床につけ、涙ながらに頼みこみます。
親子ほど年のちがう劉備は、恥をかなぐり捨て、心から泣き、その醜態を見せつけました。
孔明は、振り向いて、劉備を見つめつづけます。
この方なら、劉備ならば、天下人になっても、民衆を苦しめることはないだろう。
そしてとうとう、孔明は、劉備と一緒に漢王室を復興させてみようと決意します。
ついに劉備は、軍師、諸葛孔明を手に入れました。その後、劉備と孔明は辛苦を共にすることになります。
新野に帰ってからも、二人は寝るにも、食事をするにも共にし、昼夜、天下の形勢、夢を語り合いました。
知れば知るほど、二人の境遇は似ていたのです。
もしも劉備が孔明を訪ねなかったら、彼は、そのまま草庵で静かに学問をしながら暮らして、
世の中に知られなかったことでしょう。
孔明も劉備に会うことで、全く予期していなかった人生を歩みだしたのです。
時に、孔明二十七歳、史上最大の決戦となる赤壁の戦い十ヶ月前でありました。
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【第十四課 第四節】
(刘备对孔明深深一礼,开口说道:)
刘 备: 汉室末胄、涿郡愚夫,久闻先生大名,如雷贯耳。
曾两次进不得相见,已留书一封, 不知可曾阅过?
(孔明摇扇微笑着道:)
孔 明: 南阳野人,疏懒性成,屡蒙将军枉临,不胜惭愧。将军请。
刘 备: 先生请。二弟, 三弟在此等候。
(刘备和孔明相对而坐,童子献茶)
孔 明: 将军手书, 亮已拜阅, 足见忧国忧民之心;但恨年幼才疏,有误将军下问。
刘 备: 水镜先生之意,徐元直之语,岂是虚谈?望先生不弃鄙贱,曲赐教诲。
孔 明: 德操、元直,皆当今高士。亮乃一耕夫,安敢谈天下事?
将军奈何舍美玉而求顽石乎?
刘 备: 先生过歉了, 大丈夫抱经世奇才,岂可空老于林泉之下?
愿先生以天下苍生为念,开备愚鲁而赐教。
孔 明: 如此愿闻将军之志。
(刘备靠近了孔明, 促席而道:)
刘 备: 汉室倾颓,奸臣当道,备不量力,欲伸大义于天下,只是智术浅短,
迄无所就。惟望先生开愚鲁而拯危难,实为万幸!
(孔明于是正言说道:)
孔 明: 自董卓造逆以来,天下豪杰并起。曹操势不及袁绍,而终能攻克袁绍者,
既靠天时,更得益于人谋也。今曹操拥百万之众,挟天子以令诸侯,此诚不可与之争锋。
孙权据有江东,已历三世,国险而民附,此可用为援而不可图之。
荆州北据汉沔,利尽南海,东连吴会,西通巴蜀,此用武之地,非其主不能守;
此乃上天赐与将军之地,难道将军无意于此吗?
荆州的西部是益州, 道路险塞,沃野千里,天府之土,高祖因之以成帝业;
而今刘璋暗弱,虽民殷国富,而不知怃恤军民,故而智能之士,思得明君。
将军既是帝室之胄,信义著于四海,总揽英雄,思贤如渴,若能跨有荆州、
益州之地,保其岩阻,西和诸戎,南抚彝、越,外结东吴,内修政理; 待天下有变,
则命一上将, 将荆州之兵以向宛、洛,将军身率益州之众以出秦川,
百姓岂能不箪食壶浆, 以迎将军乎? 诚如所言,则大业可成,汉室可兴矣。
(孔明说完,取来一轴画图挂在堂中,指着图对刘备道:)
孔 明: 将军欲成霸业,北让曹操占天时,南让孙权占地利,将军可占人和。
此乃西川五十四州之图。先取荆州为家,后取益州建立基业,以成鼎足之势,
然后可图中原。此乃亮为将军谋划之大业。
(刘备听罢,站起来拱手谢道:)
刘 备: 先生之言,茅塞顿开,使备如拨云雾而睹青天。
但・・・荆州刘表、益州刘璋,皆汉室宗亲,备安忍夺之?
孔 明: 亮夜观天象,刘表不久于人世;刘璋非立业之主: 西川久后必归将军。
(刘备一听,深深点头拜请孔明道:)
刘 备: 先生未出茅庐,已知三分天下,真万古之人不及也!
备虽名微德薄,愿先生不弃鄙贱,出山相助。备当恭听教诲。
(刘备对孔明的高见宏论钦佩至极。恳请诸葛亮出山相助, 但孔明推辞道:)
孔 明: 亮久乐耕锄,懒于应世,不能奉命。
刘 备: 先生, 真不肯出山相助?
孔 明: 实难从命。
(刘备即双膝跪地泣告。泪沾袖袍, 衣襟尽湿。他不为私利流泪, 则为苍生而泪)
刘 备: 先生若不出山,如苍生何也?
(真乃精诚所至感天动地。孔明深为刘备的至诚所打动。
他沉思一刻, 便答应了刘备的请求)
孔 明: 为图将军之志,亮愿效犬马之劳。
刘备大喜,遂命关羽、张飞入,拜献金帛礼物。
孔明固辞不受。刘备曰: 此非聘大贤之礼,但表刘备寸心耳。孔明方受, 命童子收下。
于是刘备等在庄中共宿一宵。第二天,与孔明一道骑马前往新野而去。
~卧龙吟~
束发读诗书修德兼修身 | 仰观与俯察韬略胸中存 | ||
躬耕从未忘忧国 | 谁知热血在山林 | ||
凤兮凤兮思高举 | 世乱世危久沉吟 | ||
凤兮凤兮思高举 | 世乱世危久沉吟 | ||
茅庐承三顾促膝纵横论 | 半生遇知己蛰人感兴深 | ||
明朝携剑随君主 | 羽扇纶巾赴征尘 | ||
龙兮龙兮凤云会 | 长啸一声舒怀襟 | ||
龙兮龙兮凤云会 | 长啸一声舒怀襟 | ||
归去来兮我夙愿 | 余年还做垅苗民 | ||
清风明月入怀抱 | 猿鹤听我再抚琴 | ||
天道常变易运数杳难寻 | 成败在人谋一诺竭忠悃 | ||
丈夫在世当有为 | 为民播下太平春 | ||
归去来兮我夙愿 | 余年还做垅苗民 | ||
归去来兮我夙愿 | 余年还做垅苗民 | ||
清风明月入怀抱 | 猿鹤听我再抚琴 | ||
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【注 釈】
【疏懒 shū lǎn 性成】 ものぐさ。不精者。
【开备愚鲁】 kāi bèi yú lǔ 开 (=enlighten 开导, 启发)
蒙 (もう) を啓 (ひら) く。 道理にくらいのを教え導く。啓蒙する。
【奸臣当道】 jiān chén dāng dào 奸臣(かん しん)が権力を牛耳る。
【董卓】 dǒng zhuó
董 卓 (とうたく) (? ~192年)
後漢末の宰相。字は仲穎(ちゅうえい)。甘粛省隴西郡出身。
献帝を擁し、多数の軍隊と呂布を得たが、政治は専横を極め、首都洛陽は荒廃する。
事態を見かねた曹操の呼びかけで、袁紹を盟主とした反董卓連合軍が結成される。
連合軍は洛陽へと迫ったが、董卓は洛陽に火を放って長安へ遷都してしまう。
権勢をほしいままにした董卓だったが、文官であった王允の 「連環の計 (美人計) 」 により、
養子の呂布に殺害される。
【挟天子以令诸侯】 xié tiān zǐ yǐ lìng zhū hóu
皇帝の威を借り、諸侯に号令する。
挟 (=倚仗别人的势力)
以 (= in order that 以便,以・・・为目的) 目的を導く接続詞。
<用例> 贮存 zhù cún 粮食以备万一。(万一に備えて食糧を蓄える)
【汉沔】 hàn miǎn
漢沔 (かんべん)
陝西省にある川の名。漢水の上流。古来は漢水全体を指した。
【吴会】 wú kuài (吴 wú 会稽 kuài jī )
呉 (ご) 三国の一つ。 222―80年
孫権が建国。のち晋に滅ぼされた。
現在の江蘇省南部、上海市・浙江省北部を指す。
会稽 (かいけい)
揚州、会稽郡。現在の長江下流南岸、浙江省紹興市付近を指す。
春秋時代の呉越戦争における 「会稽の恥」 という故事成語で知られる。
孫策が王朗を破って以来、呉の中心地となる。
【巴蜀】 bā shǔ
巴蜀 (はしょく) 四川省一帯の古名。
「巴」 は現在の重慶一帯を指し、「蜀」 は現在の成都一帯を指す。
【高祖】 gāo zǔ
高祖 (こうそ) (前247~前195年) (在位、前202~前195年)
漢の初代皇帝。姓は劉、名は邦。江蘇省沛県出身。
前209年、陳勝・呉広に次いで挙兵。いち早く関中に入って秦を滅ぼしたが、
覇権は項羽の手中に帰し、彼から巴蜀・漢中を与えられ漢王に封ぜられる。
次いで項羽と争い、前202年項羽を垓下(がいか)の戦で破って天下を統一。
長安に都して漢朝を創立。秦の官制、法治主義を受け継ぎ、中央集権化を図り、
郡国制をしいた。しかし匈奴(きょうど)に対しては消極策に終始した。
【戎】 róng
〈古〉 戎 (じゅう) 西方にいた異民族の称。
【彝】 yí
イ族。(少数民族)
チベット系民族で、雲南省を主に四川・貴州省にも居住。
農業を主とし、牧畜も営む。
【越】 yuè
越族 (えつぞく) 長江以南から現在のベトナムにいたる広大な
地域に住んでいた南方民族の総称。百越ともいう。
【则命一上将, 将荆州之兵以向宛】 zé mìng yī shàng jiàng, jiàng jīng zhōu zhī bīng yǐ xiàng
wǎn
しかるのち、配下の将軍に命じ、荊州の兵を率いさせ、宛 (えん) に向かわせる。
则 (=便) 将 (=带兵) 以 (=为目的) 向 (=去)
【秦川】 qín chuān
現在の陝西、甘粛省、秦嶺以北の平原地帯 (関中盆地) を指す。
春秋、戦国時代、秦国に属したためこの名がある。
【箪食壶浆】 dān sì hú jiāng
〈成〉 軍隊が人民に歓迎されるさま。箪 (わりご) 〈古〉(竹で丸く編んだ) 飯びつ。
昔、人々が飯を簞に盛り、飲料を壺に入れて義兵を迎え、もてなしたことから。
【茅塞顿开】 máo sè dùn kāi
〈成〉 一気に疑問が解ける。はたと納得する。目からうろこが落ちる。
【效犬马之劳】 xiào quǎn mǎ zhī láo
主君または他人のために力を尽くす。
旧時、臣下が君主に対して、自らを犬馬にたとえ、謙遜と忠誠を表したもの。
【卧龙吟】 wò lóng yín 臥龍吟 (がりゅういん)
「三国演義」 挿入歌。北京の作詞家、王建(1928~)の作。
劉備に三顧の礼を受け、故郷である臥龍岡(がりゅうこう)を出立する諸葛亮の忠臣と愛国を称える歌である。
【韬略】 tāo lüè 中国古代の兵法書 「六韬」(りくとう)と 「三略」(さんりゃく)の合称。転じて兵法の極意。
【纶巾】 guān jīn 綸巾(りんきん) 絹の組みひもでつくった頭巾。
【夙愿】 sù yuàn 宿願。前々からの願い。
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【口語訳】
(玄徳は、孔明に深々と一礼しいう)
玄 徳: 漢室の末裔、涿郡(たくぐん)の愚夫、劉玄徳、先生のご高名は、雷鳴の如く、
耳に久しく聞き及んでおりまする。
過日、二度程お伺い致しましたが、お目にかかれず、拙文(せつぶん)を託しました。
ご覧頂けましたか?
(孔明は、白扇を揺らし、微笑みながらいう)
孔 明: 南陽野人の怠け者ゆえ、将軍には幾度もお運びいただき恐縮の至り。
どうぞ、将軍、お入りください。
玄 徳: 先生こそお先に。次弟、三弟は、ここで待っていてくれ。
(玄徳と孔明は向かい合って座る。そこへ、童子が、茶を献じる)
孔 明: ご書面で、将軍の民と国を憂うお心、よく分かりましてございます。
だが私は若輩で才もなく、将軍のお役には立てぬこと、ただただ遺憾に思うばかり。
玄 徳: 水鏡先生や徐庶殿は戯れ言(ざれごと)を言う方たちではありませぬ。
何とぞお見捨てなく、愚夫玄徳のため、まげてご教示くだされ。
孔 明: 二人は世に秀でた人物。私は一介の百姓。天下を論ずる柄ではありませぬ。
将軍はなぜ玉(ぎょく)を捨て、石を拾われようとなさるのか?
玄 徳: ご謙遜なさいますな。世を救う鬼才をもちながら、この竹林に空しく埋もれるおつもりか?
願わくば天下の民を思い、愚鈍な私をお導きください。
孔 明: では将軍のお志をお聞かせ下さい。
(玄徳は、孔明に席を近づけ、座りなおして語る)
玄 徳: 漢室が傾き、奸臣が大権を握る今、天下に大義を示さんとしましたが、我が知力及ばず、
何事も為せぬ有様です。是非とも先生のお力で、この愚才を導かれ、以って世の危機を救いたい、
それこそが何よりの幸せと願う次第。
(かくて孔明は言葉を正して語り始める)
孔 明:
董卓の反逆以来、天下に群雄が割拠しております。
曹操の力は袁紹に及ばなかったが、最後は袁紹を打ち破った。
それは天の時に加え、何よりも戦略に一日の長があったからにほかなりません。
今や曹操は百万の大軍を擁して、天子の威を借り、諸侯に号令を下している。
よってこれと鉾を争うことは、けだし容易ではありません。
また孫権は江東を守って、はや三代。長江の要害に守られて、民力も盛ん。
よって同盟を計ることが得策であり、決して敵には回すべきではない。
一方、荊州は、北に漢水を擁し、南海へ抜ける便を持ち、東は呉、会稽に通じ、
西は巴(は)・蜀(しょく)と国境を接し、要衝の地にして、干戈(かんか)が絶えません。
天が将軍に与えた宿命とはいえ、守り通すは至難の業です。
よもや将軍、この地に興味を持たぬことはありますまい。
荊州の西の益州に入れば、要害堅固にして千里の沃土をもつ天府の地。
高祖もここから王覇(おうは)の業を成し遂げました。
しかし、国は富み民は栄えようとも、国主の劉璋(りゅうしょう)は、至って時代にくらく、
軍と領民を顧みず、よって心ある者は皆、明君の出現を渇望しております。
さて将軍は、漢室の末裔、信義の名は、四海に響き、英雄豪傑を配して、
なおも賢者を求めている。
もし、荊州、益州を治めたら、要害を固め、西と南の蕃族(ばんぞく)を手なづけ、
孫権と同盟して、内政を整えます。
そして機を見て、配下の将に、荊州の軍勢を与えて、宛城(えんじょう)洛陽を攻撃させ、
将軍自らは、益州の兵を率いて、関中に討って出るのです。
民百姓は、諸手(もろて)を挙げて、将軍を迎えるでしょう。
さすれば、覇業も成り、漢室の再興という大願も成就するものと、私は信じまする。
(孔明は話し終わると、一幅の大きな軸を取り出し、壁にかけて、それを指していう)
王道を極めるなら、北は天の時を得た曹操にゆずり、南は地の利を占めた孫権にゆずり、
将軍は人の和を西に求めるべきです。
これは西川(せいせん)五十四州の図です。荊州を足場に益州で基盤を築き、
天下三分の後、中原(黄河領域)に入るのです。これが将軍に献上する「天下三分の計」であります。
(玄徳は、聞き終わると、立ち上がり、拱手し謝意を表していう)
玄 徳: 先生のお言葉で、目の前が急に開けた想いです。厚い雲が払われ、青空を見た心地です。
しかし・・・劉表、劉璋はともに漢室の一門、この二州を奪(と)るに忍びませぬ。
孔 明: 私は毎晩、星を見ますが、劉表の命脈はまもなく尽き、劉璋は大業の器ではなく、
この西川の二州、黙っていても将軍の手に落ちます。
(玄徳は深々とうなづき、孔明に拝礼していう)
玄 徳: 先生は、この地を一歩も出ず、天下三分を計られる。古今の何人も及びません。
この劉備、才は乏しく、徳もありませぬが、どうかこの不肖の徒をお見捨てにならず、
山を下りてお力をお貸しくだされ。先生の策に、自分の全てを賭けて従います。
(玄徳は、孔明の見識の広い理論にいたく敬服し、草庵を出て自分に力を貸すよう懇請する。
しかし孔明は辞退していう)
孔 明: いやいや、ここでの野良仕事も、長く続けると楽しいものです。
それに元来、不精ゆえ、世事に身を処するは性に合いませぬ。
よって将軍の申し出に応えるわけにはまいりません。
玄 徳: どうしても、お聞き届け願えませぬか?
孔 明: 申し訳ないが、お受け出来かねまする。
(玄徳は、両膝を地につけ、ひざまづいて、泣いて訴える。涙は長衣の袖、裾をことごとく濡らし尽くした。
その涙は決して自己の為に流れるものでは無い。玄徳は天下万民の為に泣くのであった)
玄 徳: 先生が起たれなければ、民百姓の苦しみを誰が救うのであろうか?
(至誠、天に通ず。孔明は玄徳の涙に深く心をうたれた。彼はしばし沈思黙考したのち、
ついに玄徳の申し出を承諾した)
孔 明: いや、お心のほどよく分かりました。
不肖ながら、この諸葛亮、将軍の志を叶えるため、犬馬の労を尽くしたく存じます。
玄徳は大いに喜び、すぐさま関羽と張飛を呼び、金帛(きんぱく)の礼物を孔明へ贈った。
孔明は、固辞しようとしたが、玄徳に、大賢を聘(へい)するには礼儀もある、志ばかりの物だからといわれ、
それではと、謹んで受け取り、童子にそれらをおさめさせた。
かくて玄徳らは、その夜、草庵に一泊し、明くる日、孔明と駒を並べ、新野の城に向け出立した。
束髪 (そくはつ) して史書を読み 徳と身を修 (おさ) む
仰ぎ また臥 (が) して 艱難辛苦し「韜略 (とうりゃく) 」 を始め 古今の兵法を学ぶ
手に鋤 (すき) を持ち 隴畝 (ろうほ) を耕せど 国を憂える心 忘れし事なし
誰知るや この山林の奥に 国を想う赤心の漢 (おとこ) ありしを
鳳凰よ 我が熱き想いを伝えよ 我が気高き孤高の志を
今 国乱れ 社稷 (しゃしょく) 危うく 詩を吟ずる事久しけれど
鳳凰よ 我が熱き想いを届けよ 我が清き至高の志を
戦火が国を覆い 万民が苦しむ時 我が詩もまた 泰平を待つ
茅廬 (ほうろ) に三顧の礼を受け 胸襟 (きょうきん) を開き 膝を交えて 国を論ず
人生半ばにして 生涯の友に逢い 隠士の感慨深く 胸躍る
暁に剣を携 (たずさ) え 君とともに 輝く明日に旅立つ
羽扇 (うせん) をうち振り 綸巾 (りんきん) を翻し 王覇 (おうは) の征途に赴く
竜よ 風雲の空を翔 (か) けよ 魑魅魍魎 (ちみもうりょう) の世に 火を噴け
竜よ 一声高く鳴いて その広き心を 万民に知らせよ
今 この地を離れ また帰る これ我が変わらぬ願い
天乱を治めて後 この地で 隴畝 (ろうほ) の民となる
清風 明月に想いを馳せ 再び故郷に戻らん
その時 我が鶴や猿 懐かしき琴の音と ともに遊ぶ
天道は 未だ定まらず 運命 (さだめ) は 杳 (よう) として知れず
成敗 (せいはい) は 人の謀 (はかりごと) に帰すも ただ忠誠を尽くすのみ
男子として この世に生を享 (う) け 凛として立つ時
万民の願い 泰平の春が あまねく輝く
今 この地を離れ また帰る これ我が変わらぬ願い
泰平の世を もたらして後 再び 隴畝 (ろうほ) の民となる
この地は 我が生涯の故郷 我が安住の地
この地に戻りて 再び 鋤 (すき) を手にする時 我が心に安らぎがかえる
清風 明月 変わらず 我を抱 (いだ) け
山の猿 里の鶴 胸ふくらませて 我が琴の音を待て
三国演義 第三十七巻 「三顧の礼」 - 完 -
<中文剧名> 三国演义 「三顾茅庐」
<英文剧名> A Romance Of Three Kingdoms 「Visiting The Thatched
Cottage Thrice」
<主 演>
唐国强 (táng guó qiáng) ・・・ 诸葛亮
孙彦军 (sūn yàn jūn) ・・・ 刘 备
陆树铭 (lù shù míng) ・・・ 关 羽
李靖飞 (lǐ jìng fēi) ・・・ 张 飞