近松物語 1954年 (昭和29年) 邦画名作選
京都の大店の手代・茂兵衛は、店の主人の妻・おさんの頼みで彼女の兄の借金の工面をする。
しかし主人に知られてしまい、茂兵衛は店を追い出されてしまう。
さらに茂兵衛とおさんは不義の疑いを掛けられ、二人はいっしょに逃走することに。
二人は逃走の中で真剣に愛し合うようになるが、おさんの夫の追跡が迫る…。
巨匠・溝口健二が近松門左衛門の浄瑠璃に新たな命を吹き込んで生み出した珠玉の名篇。
京都の暦職人・茂兵衛は、主人の妻・おさんとの不義密通の罪を問われ、二人は逃げる。
途中、琵琶湖で心中を図るが、その折に茂兵衛は、自分の思いを告白する。
結局、二人は捕えられ、磔になってしまう。しかし、二人の愛は変わることはない。
悲劇の背景には、封建社会の身分制度があるのだが、溝口は、それに対する恋人たちの
愛の不滅というテーマを際立たせている。
緻密に構成された脚本、邦楽を自由自在に駆使した音響効果、幻想美の粋を集めた映像
など、どれをとっても一級の、様式美を極めた作品に仕上がっている。
溝口監督と主演の長谷川一夫は、演出の面でことごとく対立していたという。
二枚目スターの長谷川は、顔をドーランで白く塗りたくるのが好きだった。
が、リアリズムを追究する溝口監督は、役者の厚化粧を一切厳禁した。
監督にスッピンで演技するよう命じられた長谷川は、渋々と従ったという。
が、撮影が進むにつれ、長谷川の顔がだんだん白くなったという笑えるエピソードがある。
製作 大映
監督 溝口健二 原作 近松門左衛門