大菩薩峠 第一篇 甲源一刀流の巻  1935年(昭和10年) 邦画名作選

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甲源一刀流の達人・机竜之助は、武州沢井村の剣術道場の跡取り息子である。

彼は明日、四年に一度開催される御嶽神社の奉納試合を控えていた。
対戦相手は、同じく甲源一刀流の師範・宇津木文之丞である。

その夜、宇津木文之丞の許婚で、お浜と名乗る女が、竜之助を訪ねて来た。
彼女は竜之助に、明日の試合に負けてくれと懇願する。

だが試合の当日、竜之助は文之丞を一刀のもとに打ち据え、惨殺してしまう。

字津木一門から追われる身となった竜之助は、追手からの闇討ちを退けると
婚家から離縁されたお浜を連れて、江戸へのがれる。



読売新聞に連載された小説「大菩薩峠」は、中里介山が、29歳で執筆を開始し、
28年かけた大作であるが、本人が急逝したため、未完で終わっている。

中里介山は、本作を「大乗小説」と呼び、仏教思想に基づいて人間の業を描こうとした。


主人公の机竜之介は、人を斬ることに何の痛みも感じない人間として描かれ、本作は
折からの不況が吹き荒れていた閉塞的な時代背景と相まって、多大な人気を博すに至った。

大河内伝次郎は、晩年、仏教に帰依し、京都の嵐山の山荘で読経三味に浸ったことで知られ、
このことから、机竜之介を演じるに、正にはまり役であったと、後々に評価がなされている。


お浜を演じた入江たか子は、1924年(大正13年)日活現代劇部に入社。華族出身の気品ある美貌で、
内田吐夢監督「生ける人形」(1929年)などに主演し、一躍トップスター女優の地位を獲得した。

時代劇にも応援出演し、片岡千恵蔵主演「元禄十三年」(1931年)、大河内伝次郎主演「忠臣蔵」
(1939年)などにも出演。芸域の広い女優であり、姫君から芸者、果ては化け猫まで演じた。


「甲源一刀流の巻」は、133分の長篇であったが、欠落部分が多く、68分の現存版が残されている。
また翌年、続篇「鈴鹿山の巻 壬生島原の巻」が制作されたが、これは残念ながら、現存していない。




 
  製作  日活

  監督    稲垣浩   原作  中里介山

  配役    机竜之助 大河内伝次郎 お浜 入江たか子 島田虎之助 岡譲二
      机弾正 山本嘉一 お松 深水藤子 土方歳三 清川荘司
      宇津木文之丞 黒川弥太郎 花師匠お絹 衣笠淳子 裏宿七兵衛 鬼頭善一郎
      宇津木兵馬   沢田清        下僕久助   藤川三之祐       道庵先生    高勢実乗 

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