男性対女性 1936年(昭和11年) 邦画名作選 |
渥見商会の社長・渥美(藤野秀夫)は、劇場投資などを手広く手掛けている。
だが、彼の息子たちは、会社を継ぐ気もなく、好きなことをやっている。
長男の行雄(佐分利信)は、学究肌の人類学者。
女学校出のモダンな藤村時子(田中絹代)に好意を寄せられるも、朴念仁。
次男の哲也(上原謙)は、パリで演劇を学んだ舞台演出家。
東洋劇場の照明主任を務める津田美代子(桑野通子)という恋人がいる。
実はこの東洋劇場は倒産寸前だった。
劇場主の藤村(水島亮太郎)は金策に奔走している。
藤村は娘の時子を、岡倉男爵の息子(斎藤達雄)と政略結婚させようとする。
だが、行雄が好きな時子は耳を貸さず、失敗する。
会社社長の父を持つ人類学者と、舞台演出家の兄弟を中心に、彼らの恋の行方や
人生の転変が描かれる。
この年の1月に、松竹は蒲田撮影所を閉鎖し、大船へ移転した。
本作は、大船撮影所開設記念と銘打ち、名実共に松竹のトップ女優である田中絹代を
筆頭とするオールスター映画である。
とはいえ、前年あたりから桑野通子や高杉早苗ら新人女優が、凄まじい勢いで台頭
しており、大船移転を機に、松竹は若手スターの時代が到来したという感があった。
とりわけ本作では、桑野通子がフランス帰りの演出家に扮した上原謙の恋人という、
かなり恵まれた役どころだった。
この桑野と上原の仲は、かねての評判になっていたのだが、本作の封切りからわずか
一か月半後に、上原は、まだ18歳の女優・小桜葉子と電撃結婚してしまった。
これは内心、上原のプロポーズを待ち続けてきた桑野には大きなショックとなった。
翌年4月に、上原と小桜の間に長男が生まれた。これが加山雄三である。
製作 松竹
監督 島津保次郎 原作 池田忠雄、猪俣勝人、津路嘉郎
配役 | 渥美恭平 | 藤野秀夫 | 藤村市造 | 水島亮太郎 | |||||||||
長男・行雄 | 佐分利信 | 長女・時子 | 田中絹代 | ||||||||||
次男・哲也 | 上原謙 | 岡倉清彦 | 斎藤達雄 | ||||||||||
津田美代子 | 桑野通子 | 時子の友人・秋子 | 高杉早苗 |