風船 1956年(昭和31年) 邦画名作選
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元画家の春樹は、カメラの会社を起こして実業家として成功していた。
だが、息子の圭吉は愛人を囲い、財力にまかせて気ままに放蕩を続けている。
ある日、歌手のミキ子と出会った圭吉は、その奔放な魅力に心惹かれてしまう…。
毎日新聞に連載された大仏次郎の同名小説を、川島雄三が映画化したもの。
戦後のアメリカ思想の流入により自由気ままに生きる若者の姿を「風船」に託している。
森雅之演じる確かな生活を希求する実直な父親像がコントラストある形で描かれている。
森の圧倒的名演に加え、三橋達也が情けない放蕩息子ぶりを見事に醸し出しており秀逸。
ヒロイン芦川いづみの純粋無垢な娘が可憐。北原三枝のクールビューティーも目を奪う。
川島演出は、例によって多彩な登場人物を停滞なくさばいており、観客をあきさせない。
なお、主人公の春樹が京都で訪れるクラブ「おそめ」は、川島の行きつけのバーである。
川口松太郎「夜の蝶」のモデルとなった店主のマダム・上羽秀が自ら特別出演している。
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製作 日活
監督 川島雄三 原作 大仏次郎
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