祇園の姉妹  　1936年（昭和11年）　　　　　邦画名作選

                                     

梅吉（梅村蓉子）とおもちゃ（山田五十鈴）は、祇園の姉妹芸者である。

姉は古い義理人情の世界に生き、妹は女学校を卒業した勘定高い現代娘だ。

あるとき、倒産した木綿問屋の主人が、梅吉の家に転がりこんできた。

落ちぶれた昔の男に義理を尽くす姉、梅吉。

妹のおもちゃはそんな姉に批判的だ。

「男はみんな自分勝手、女を利用するだけや！」



溝口健二原作、依田義賢脚色。封建社会に従順な姉と、男を騙して
金を巻き上げるのが商売と心得ている妹との対称的な生き方を描く。


最後に妹は、男たちに復讐されて怪我をし、見舞いにきて忠告する姉に、
芸者と言う商売が悪いんや！と叫ぶ。


ここで重要な事は、芸者などという男尊女卑の封建的な職業そのものが
あってはならないのだ、と叫んでいるのである。

そんな彼女たちの上にふんぞり返り、そして手玉にとられたりする男たち
の姿というものが、なんとも卑しく滑稽な俗物として描かれている。


祇園を舞台にした作品は意外に少なく、恐らく本作に止めを刺すのではないか。

一見華やかな世界の底に、このようなドロドロとした人間関係があったのかと、
祇園をここまで掘り起こした溝口のリアリズムの真骨頂が伺える。


 
 
　製作   第一映画　　配給　松竹キネマ

  監督   溝口健二