グラマ島の誘惑   1959年(昭和34年)     邦画名作選
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太平洋戦争末期、日本の皇族を乗せた船が撃沈された。

近くのグラマ島に流れ着いた生き残りは、皇族と軍人、従軍慰安婦たち。

島には原住民が一人いる他は、まるっきりの無人島だった。

当然、生き残るために食糧を探したりしなければならない。

だが、食って寝てばかりの皇族に、威張り散らすだけの軍人たち。

結局、慰安婦の女たちを働かせて食わせてもらうという体たらく。

ある日女たちは、墜落したB-29の残骸から、一丁の拳銃を見つける。

このときから、島の人間関係は一変するのであった。



実話を元にした飯沢匡の戯曲「ヤシと女」(1956年初演)を、川島雄三が脚色して映画化したもの。

南海の孤島に漂流した皇族や慰安婦らが巻き起こす騒動をブラックユーモアたっぷりに描く娯楽巨編。

どこかファンタジックな島の生活の中に、戦後の日本の縮図がシニカルに描かれており、天皇制批判、
沖縄問題、原水爆といった社会風刺をテーマにした作品となっている。

島で働こうとしない皇族たちは、女たちの怒りを買ってしまい、実質的に皇族の位を失っているのだが、
形式的にはその地位に留まったままである、という戦後日本の民主主義のパロディが表現されている。


 
 
 
  製作   東宝

  監督   川島雄三

  配役    香椎宮為久(海軍大佐) 森繁久彌 佐々木しげ 浪花千栄子
      香椎宮為永(陸軍大尉) フランキー堺 北川たつ 轟夕起子
      兵藤惣五郎(御付武官) 桂小金治 香坂よし子 淡路恵子
      ウルメル(原住民) 三橋達也 上山とみ子 八千草薫

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