人妻椿 1936年(昭和11年) 邦画名作選 |
幸せな家庭を築いていた矢野昭(佐分利信)は、ある日、妻子を置いて行方をくらます。
彼は、恩人の実業家・有村(藤野秀夫)の殺人の罪を被り、国外逃亡したのだった。
有村は、矢野の妻子の面倒を見ると約束したものの、その後、心労がたたり急死する。
この時から、幼子を抱えた人妻・嘉子(川崎弘子)の苦難の日々が始まるのだった。
1935年女性月刊誌「主婦之友」に連載された小島政二郎の同名小説の映画化。
会社員が殺人を犯した恩人の罪を被り、国外に逃れた後、彼をひたすら待つ妻は、
子供を抱えつつ、世間の荒波に晒され、生活と貞操を脅かされる。
生活に行き詰まって故郷に帰ると、父親が急死、また都会に戻りデパートの
店員として働きはじめるが、火災に遭遇してしまう。
次から次へと不幸な運命に翻弄されるヒロインを、川崎弘子が熱演し、
本作は、空前の大ヒットとなった。
川崎弘子は、1929年(昭和4年)2月、スカウトされて松竹蒲田に入社。
どこか陰のある美人で、メロドラマのヒロインにうってつけの彼女は、たちまち
松竹を代表するトップスター女優となった。
1935年11月、 人気絶頂のさなか、作曲家の福田蘭童氏と結婚。
結婚を機に人気にやや陰りが見え始めたが、本作の大ヒットにより、人気も大きく回復した。
なお、笠智衆といえば、朴訥で誠実、飾り気のない善人を演じ続けた昭和の名脇役だが、
そんな彼が、生涯でただ一度「悪役」を演じた作品が、本作「人妻椿」である。
薄幸のヒロイン(川崎弘子)に、しつこく迫る地元有力者の網元に扮している。
あの独特の熊本弁で、凄味の利いた悪役振りを演じていて、さすが名優と感服した次第。
製作 松竹
監督 野村浩将 原作 小島政二郎
配役 | 矢野昭 | 佐分利信 | 草間俊夫 | 上原謙 | |||||||||
妻・嘉子 | 川崎弘子 | 網元・渡辺虎一 | 笠智衆 | ||||||||||
有村喜助 | 藤野秀夫 | 大工・徳三郎 | 坂本武 | ||||||||||
息子・恒也 | 山内光 | 千代 | 飯田蝶子 |