人生のお荷物   1935年(昭和10年)     邦画名作選
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初老のサラリーマン・福島省三(斎藤達雄)には三女一男があった。

長女は医師に、次女は画家に嫁いでいた。

三女は未婚だったが、やがて縁談もまとまり軍人のもとに。

三女の結婚式を終えた省三は、妻とホッとしながら家に帰る。

が、よくよく考えてみると晩年に生まれた小学生の息子がまだ残っていた。

この息子はどうも、父親になついていない。

こんな奴のためにまだ頑張らねばならんのか、と省三はウンザリするのだった。



三人の娘を嫁がせ、人生に一区切りをつけた父親。

隣室で寝ている息子を見て「まだこいつがいた」と苦虫を噛みつぶしたような表情。

「やれやれ」というため息の中に、ほのかな幸福感がにじみ出る松竹蒲田調の味わい。


斎藤達雄がうだつの上がらぬ亭主役にペーソスをにじませ、次女の田中絹代が洋服を
粋に着こなすモダン・ガールを好演している。

松竹お得意の小市民映画の一つであり、これといって大きな事件は起こらないが、
心温まるラストが用意されていて、見終わった後は、ほのぼのとした後味が残る。


 
 
 製作   松竹

  監督   五所平之助  原作 伏見晁

  配役    福島省三 斎藤達雄 次女・逸子 田中絹代
      妻・たま子 吉川満子 夫・栗山俊吉 小林十九二
      息子・寛一 葉山正雄 三女・町子 水島光代
      長女・高子 坪内美子 夫・橋本公正 佐分利信

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