風の中の牝鶏 (めんどり) 1948年(昭和23年) 邦画名作選
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時子(田中絹代)はミシン仕事の下請けで暮らしている。
そんなある日、息子の浩が病に倒れ入院することに。
医療費のため、時子は見知らぬ男に身体を売ってしまう。
復員してきた夫・修ー(佐野周二)に己れの過失を告げる時子。
妻の真実を知った修一は、時子を突き飛ばし、彼女は階段の下に転げ落ちる。
彼は急いで駆け寄ろうとするが、おじけづいて階段の上のところで立ち尽くす。
階段の下には、うつぶせに横たわっている妻の姿が悲しげに映し出される。
這い上がってきた妻は、夫に自分を殴って気のすむようにしてくれと言う。
本作は、悲惨な戦後の現実を描いた、小津安二郎唯一の「反戦映画」である。
戦場は描かれないが、戦争による家族の分断、悲劇が圧倒的に観る者の胸を打つ。
やがて夫は、妻の過ちを許す。夫は、戦時中の苦しかった体験を思い出し、銃後で
耐え忍んだ妻を愛おしむことによって、自分の気持ちを変えることができたのだ。
家族の分断をテーマとする「晩春」ほか、小津の戦後の一連の作品に描かれる
家族像の原点は、まさに本作「風の中の牝鶏」にある。
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製作 松竹
監督 小津安二郎
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配役 |
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雨宮修一 |
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佐野周二 |
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浩 |
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中川秀人 |
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小野田房子 |
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文谷千代子 |
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時子 |
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田中絹代 |
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井田秋子 |
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村田知英子 |
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佐竹和一郎 |
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笠智衆 |
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