絹代の初恋 1940年(昭和15年) 邦画名作選 |
東京の下町でせんべい屋を営む絹代は、母親亡き後、一家を支えている。
ある日、幼馴染のおのぶ(水戸光子)と連れ立って芝居見物に出かける。
あいにく当日券が売り切れだった。そこへ見知らぬ男が二枚のチケットを差し出す。
「よかったら、どうぞ」男はそう言って、立ち去って行った。
「いい男ね」と囁くおのぶの脇で、絹代の恋はすでにはじまっていた。
だがその男、昌一郎(佐分利信)は、実は絹代の妹の婚約者だった。
田中絹代が31歳の時の作品で、この年まで初恋の経験もないというのは天然記念物
ものだが、恋愛ご法度の戦前は、そうした女性も多かったのかも知れない。
田中絹代自身、42歳まで堂々と娘役を演じており、監督も共演者も誰も異議を唱え
なかったのは、やはりそれだけ雲の上のような大女優だったからなのだろう。
映画では、絹代が初めて恋心を抱いた男性(佐分利信)は、実は絹代の妹(井川邦子)
の婚約者だったことが分かる。
驚く絹代だが、健気にも「私は母親代わりだ」といって妹の幸せを優先させる。
なお本作は、井川邦子のデビュー作としても知られる。映画では21歳の設定だったが、
実際は17歳だった。可愛いし小気味の良い演技で、相手役の佐分利信もタジタジだった。
製作 松竹
監督 野村浩将
配役 | 三好絹代 | 田中絹代 | 桐山誠之助 | 三桝豊 | |||||||||
三好光代 | 井川邦子 | その妻 | 葛城文子 | ||||||||||
三好六達 | 河村黎吉 | おのぶ | 水戸光子 | ||||||||||
桐山昌一郎 | 佐分利信 | 芸者・房江 | 坪内美子 |