鞍馬天狗 疾風雲母(きらら)坂 1953年(昭和28年) 邦画名作選
幕末の京都。勤王の志士、荒木田(高田稔)が何者かに殺され、彼が研究していた火薬が奪われた。
死体の傍らにあった短銃により、勤王の同志たちは鞍馬天狗(嵐寛寿郎)が下手人と疑う。
荒木田の命日、未亡人お柳(宮城千賀子)と共に墓に詣でた天狗を、頭巾の女の短銃が狙う。
大仏次郎の原作を、丸根賛太郎が脚色、萩原遼が監督。「鞍馬天狗」シリーズ第33作。
同志の暗殺が天狗の仕業と疑われ、身の潔白を晴らさんと奔走する鞍馬天狗。
天狗とよく似た宗十郎頭巾の人物が真犯人なのだが、その正体がよくわからない。
ミステリー仕立てが興趣を盛る。
戦後、時代劇が作れない時期があった。GHQによる「チャンバラ禁止令」である。
この間、時代劇スターたちは、明治ものや現代劇、たとえば片岡千恵蔵主演の
「多羅尾伴内」シリーズなどで、お茶をにごさざるを得なかった。
講和条約により、ようやく時代劇が解禁となった1951年(昭和26年)に東映が誕生。
嵐寛寿郎主演の「鞍馬天狗」も再開され、戦前から通算すると第33作目に当たる。
これがなんと、1956年(昭和31年)まで、引き続いて通算40作が制作され、
あの「フーテンの寅さん」シリーズに次ぐ国民的ロングシリーズとなった。
製作 東映
監督 萩原遼 原作 大仏次郎