| モスラ対ゴジラ 1964年(昭和39年) 邦画名作選 |

大型台風が去った後、巨大な卵が日本に漂着した。
それは南の島・インファント島から流れ着いたモスラの卵だった。
発見した漁民から卵を買い取った興行師・熊山(田島義文)は、卵を見世物にして儲けようと企む。
そこへインファント島から双子の小美人(ザ・ピーナッツ)が卵を返して欲しいとやって来た。
熊山は、それを聞き入れないばかりか、小美人をも捕えて商売に利用しようとする。
そんな熊山の態度に失望した二人は島へ逃げ帰る。

正義感あふれる毎朝新聞の酒井記者(宝田明)と新米カメラマンの純子(星由里子)は、
小美人に協力し、なんとか熊山から卵を取り返そうとする。
そんな時、海底が地割れして、不死身の巨大怪獣ゴジラが出現!
ゴジラは、手当たり次第に建物を破壊しながら進撃を開始するのだった。
ゴジラを止められるのはモスラしかいない。
新聞記者の酒井らは、モスラの助けを求めるべくインファント島に向かうのだが…。
1961年に公開された「モスラ」の続編で、ゴジラ映画の4作目となる。
ゴールデンウィークに公開された本作は、最終的に720万人の観客を動員、これ以降、各映画会社で
巨大な怪獣が登場する特撮作品が相次いで制作され、第一次怪獣ブームの到来となった。

インファント島に上陸した酒井らは、荒れ果てた大地と夥しい数の生物の死骸を目撃する。
島は、かつての原水爆実験の影響を受けて死の世界と化していたのだった。
小美人と再会を果たした酒井らは、必死の思いでモスラによる救援を要請する。
だが、その要請を言下に却下するインファント島の長老。
島が原水爆実験の犠牲になったことから、島民たちの心は外部の人間に対する不信感で
満たされていたのだった。その彼らに助けを請うという手前勝手な人間たち。
長老は言う。放射能の申し子であるゴジラを生み出したのは人間、その人間が甚大なしっぺ返しに
遭うのは自業自得ではないか、と。
この長老の発言に、原水爆実験をしたのは我々ではなく、アメリカだと反論するのは妥当ではない。
長老の怒りは、聖なるモスラの卵を見世物にしようとしている日本人にも向けられていたのだ。

そして遂に、長老と日本人たちの争いを解決へと導いたのは、まさに島の守護神モスラであった。
日本もかつて、インファント島と同じく核の犠牲になった国だった。いつの日か原水爆実験を
我々日本人の努力でやめさせてみせる、そうした酒井らの思いが、モスラの心に通じたのだ。
核の恐怖を共通体験として持つ日本とインファント島は、ここにようやく心を一つにした。
だからこそ、モスラは日本を救うためにやってくるのだった。
本作は、善と悪とがハッキリとした明快なストーリーとともに、その巧みな特撮に目を見張る。
海岸の砂浜に引き上げられたモスラの卵の撮影では、卵の模型と、砂浜で卵を取り囲むエキストラ
の実景とを「マットアート」という手法で合成している。
また、モスラの幼虫は、大きさの異なる三タイプのモデルを二体ずつ制作。
走行タイプの幼虫は、ウネウネと上下する動力機械を内蔵したもので、眼には電飾が施されている。
とりわけ遠近の使い方が絶妙で、本当にゴジラが巨大に見える。モスラもまた空を飛ぶシーンや
幼虫の動きにもぎこちなさがない。CGのなかった当時、この特撮技術はまさに匠の技である。

製作 東宝
監督 本多猪四郎 特撮監督 円谷英二
| 配役 | 酒井市郎 | 宝田明 | 熊山 | 田島義文 | |||||||||
| 中西純子 | 星由里子 | 虎畑次郎 | 佐原健二 | ||||||||||
| 三浦博士 | 小泉博 | デスク | 田崎潤 | ||||||||||
| 中村二郎 | 藤木悠 | 対策本部長 | 藤田進 | ||||||||||
| 小美人 | 伊藤エミ・伊藤ユミ | 長老 | 小杉義男 |