見初められて商家に嫁いだ信子は夫との間に息子をもうけるが、夫は戦死してしまう。
戦後、夫の親友・秋本と再会し、ほのかな想いを寄せるが、秋本はやがて姿を消す。
息子を抱え、闇屋をしながら戦後を生き抜いた信子は、ささやかな美容院を開く。
息子の功平は成長して車のセールスマンとして働きはじめる。
しかし、ある日、功平はキャバレーで働く恋人みどりを残して事故死してしまう。
功平の死後、みどり(星由里子)が訪ねてきて妊娠していることを告げる。
信子(高峰秀子)は「誰の子かわかるものか」と冷たく突き放す。
みどりは怒りを見せ「だったら堕ろします」と言い捨てて出ていく。
後悔した信子が後を追うと、アパートの隣人から「病院へいった」と言われる。
呆然として雨の中を歩いていると、濡れながら帰ってくるみどりと出会う。
「もう、堕ろしたの」と尋ねると、みどりは黙って母子手帳を見せる。
戦争に愛する夫を奪われ、女手一つで育てた息子も交通事故で失った信子の歴史。
そして同じ境遇になったみどりの歴史が続いていく。
「女の歴史」は「女たちの歴史」でもあったのだ。
悲しみを乗り越え、強く逞しく生きる女性像を追求した、名匠・成瀬巳喜男、渾身の一作。
製作 東宝
監督 成瀬巳喜男