新版大岡政談 第一篇   1928年(昭和3年)     邦画名作選

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享保七年十月、八代将軍吉宗の治世。

江戸の小野塚鉄斎の道場には祖先より伝わる関の孫六作「乾雲、坤竜」と呼ばれる大小一対の名剣があった。

折しもこの名剣を譲り受ける事と、鉄斎の一人娘、弥生の婿選びの意味も兼ねた剣術試合が開催されていた。

しかし弥生が思いを寄せる諏訪栄三郎は、その日、好調に勝ち進んでいた同門の鉄馬にもろくも破れさった。


突如、一人の浪人が道場に乱入した。黒えりに白の着流し、隻眼隻腕の異様な風体、その名は丹下左膳。

日を改めてくれという鉄斎の言葉にも耳を貸さず、左膳は鉄馬に挑みかかり、あっさり打ち負かしてしまう。

その直後、飾ってあった乾雲を手にした左膳は、迫ってくる同門一党を片っ端に斬り倒して行くのだった。


弥生は、残る坤竜の剣を守るのに精一杯、父、鉄斎も左膳の手にかかって果ててしまう。

鉄斎の葬儀の後、栄三郎は弥生に坤竜を托され、乾雲を取戻すことを誓うが…。




主君の密命を受けた左膳は道場破りをして乾雲の一刀を奪うが、坤竜は殺された道場主の娘弥生の手に残る。

弥生に坤竜を托された諏訪栄三郎は、お互いの持つもう一振を巡り、左膳と血で血を洗う争いを繰り広げる。


離れれば互いを呼び合って哭くという刀身に魅せられた左膳は、夜な夜な辻斬りをしては刀に血を吸わせる。

市中を騒がす左膳を捕らえようとする大岡越前守。また栄三郎を慕う弥生、栄三郎と思い合う矢場の女お艶、
左膳に寄り添う鉄火の櫛巻きお藤と、女たちもまた命運をかけて策略を凝らす。


林不忘の原作を伊藤大輔が脚色・監督。伊藤と大河内とは、前年に「忠次旅日記」を作っている黄金コンビ。

だが、迫力ある立ち回りで一世を風靡したこの作品は、現在ではフィルムが散逸し、数点の断片が残るのみである。



 


  製作  日活

  監督  伊藤大輔    原作 林不忘

  配役   丹下左膳 大河内伝次郎   小野塚鉄斎 卯島五郎 鈴川源十郎 金子鉄郎
      大岡越前守 大河内伝次郎   弥生 伊藤みはる 当り矢お艶 梅村蓉子
      櫛巻きお藤 伏見直江
  諏訪栄三郎 賀川清 伊吹大作 瀬川銀潮

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