男ありて 1955年 (昭和30年) 邦画名作選
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島村達郎(志村喬)は、仕事一筋のプロ野球監督である。
ある時、試合で審判を殴ってしまい、一か月の出場停止となる。
達郎はその間、今まで家族を顧みなかったことを反省する。
そして再びグラウンドへ戻った後、引退を決意するのだった。
勝負一途に生きる初老の男の、家庭生活と職人生活を味わい深く、しみじみと描く。
志村喬が、引退間際のプロ野球監督を力演。円熟した渋い演技を見せている。
主人公の島村達郎(志村)は、野球のことばかり考えている。家の事は何もしない。
ある時、家族に相談もなしに、新人選手・大西(藤木悠)を家に同居させてしまう。
父の横暴さに反発した娘・みち子(岡田)は家出してしまう。その後、出場停止を
解かれた島村は、遠征地にかけつけたが、そこに妻の急死を知らせる電報が届く。
これまで達郎は、妻のきぬ江(夏川)を家政婦くらいにしか思っていなかった。
だが妻の死後、彼は初めて男泣きに、大声を上げて嗚咽するのだった。
本作は、野球に賭けた男の人生のたそがれどきの哀愁を描いた佳篇であり、主人公を
演じた志村にとっても、監督の丸山誠治にとっても代表作となった。
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製作 東宝
監督 丸山誠治
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