新篇 丹下左膳 隻眼の巻 1939年(昭和14年) 邦画名作選
千葉周作に片腕を斬られた左膳は、傷ついた体を押して父の仇、明石藩主・松平兵部の行列を目指す。
しかし時すでに遅く、行列は過ぎた後だった。
しかも待ち伏せていた黒頭巾の浪人の一太刀によって、左膳は右眼を斬られて倒れ伏す。
瀕死の状態だった左膳は、通りがかった明石藩商人・吉野屋半左衛門に助け出される…。
中川信夫監督による「新篇丹下左膳」シリーズ第三作。大河内が日活作品に続き当たり役を演じている。
前作で右腕を失った左膳が、さらに本作では右眼を斬られ、隻眼隻手の丹下左膳が誕生。
非情な世界に、左膳にほのかな想いをよせる商家の娘・お春との温かな交感が救いとなる。
川口松太郎原作の本作は、左膳の出自も描かれた復讐譚であるが、左膳の本来のニヒリズムはかなり
薄れており、高峰秀子演じるお春との微笑ましい交流を通じて、左膳の人間的な魅力が描かれている。
シリーズは、妖刀篇、隻手篇、隻眼の巻、恋車の巻の四篇が制作されたが、現在ではフィルムが散逸し
現存するのは、本作の隻眼の巻のみとなっている。
製作 東宝
監督 中川信夫 原作 林不忘