驟雨(しゅうう) 1956年(昭和31年) 邦画名作選
結婚四年目の夫婦、亮太郎と文子は、お互いに倦怠を感じていて喧嘩が絶えない。
ある日、亮太郎は会社の人員整理を言い渡され、田舎に帰りたいと文子に告げる。
退職後のことがきっかけで、二人はまた口論を始めるのだった…。
岸田国士の数編の戯曲を水木洋子が脚色し、成瀬巳喜男が監督・演出した作品。
昭和30年前後の東京を舞台に、倦怠期を迎えた夫婦の日常をユーモラスに綴った秀作。
佐野周二の演じる夫と、原節子が演じる妻が東京世田谷で暮らしている。
いまや倦怠期で、子供もなく、些細な事で口喧嘩が絶えない毎日だった。
新婚旅行に出たはずの姪の娘が、突然家にやってきたり、ご近所同士との軋轢など、
若干の波風がたつが、たいした事件にもならず、いつも通りの二人の日常生活が続く。
ところがある日、会社の希望退職に夫が相談もせずに応じてしまう。
それがもとで、夫婦のいさかいは別居の話まで発展し危機的状況に陥る。
するとその時、近所の子供が遊んでいた紙風船が庭先へ転ってくる。
夫は、その紙風船を拾い、近所の子供に見せるため一人でつき始める。
すると妻も庭に現れ、夫の紙風船を打ち返す。そのまま夢中になって打ち合う二人。
これで先ほどまでの夫婦のいさかいは、話し合いも何もなく自然に解決してしまっている。
紙風船を打ち合う二人の姿だけで全てが表現されていたのであり、それが成瀬演出の流儀なのだ。
そして佐野周二も原節子も、それを十分に心得て演じているのである。
製作 東宝
監督 成瀬巳喜男