蘇州の夜   1941年(昭和16年)     邦画名作選
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加納良一(佐野周二)は、上海の病院に赴任してきた若い医師である。

ある日、同僚の大西が孤児を収容している施設「愛隣園」から帰ってきた。

聞けば日本人の医師だという理由で、保母が彼の往診を断ったというのだ。

憤慨した加納はそこへ出向き、病人を無理やり診察してしまう。

頑固な保母というのは梅蘭(李香蘭)という娘であった。

その後、孤児の一人が、母に会うため施設を飛び出し事故に遭う。

彼を献身的に助けたのは加納であった。

梅蘭は、加納の真摯な姿勢を見て、次第に彼に惹かれていく。



日本人医師と中国人女性との恋を描いた戦時国策映画である。

中国娘に扮する李香蘭は、はじめは日本人医師に反発するのだが、
次第に心を開いてゆく微妙な女心を演じる。


中国人女性が、敵国の日本人の優しさに触れて、次第に協力するようになる、
というストーリーは「大陸物」と言われ、この時期、盛んに制作された。

特に、東宝の長谷川一夫と李香蘭が主演した「白蘭の歌」「支那の夜」「熱砂の誓ひ」
の大陸三部作は、典型的なもので、幻想の日中親善を装った国策映画となっている。


本作は、松竹が川口松太郎原作の「蘇州の夜」を野村浩将監督で映画化したもの。

松竹の二枚目スター・佐野周二を李香蘭の相手役にすえ、若手美人スターの
水戸光子をこれに配して、大いに日中親善のロマンを謳い上げている。


 
   

  製作   松竹

  監督   野村浩将  原作 川口松太郎

  配役    加納良一 佐野周二 大西 小林十九二
      梅蘭 李香蘭 鹿沢 大山健二
      院長 斎藤達雄 小倉 藤野秀夫
      千江子 水戸光子 その夫人 吉川満子

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