都会交響楽 1929年(昭和4年) 邦画名作選 |
カフェの女給・お染(夏川静江)は、社長の息子・春吉(一木札二)に恋して
だまされる。
春吉は、妊娠したお染に、手切金を与えて棄てようとするが、お染は狂乱し、
流産してしまう。
一方、お染と同郷の元蔵(小杉勇)は、春吉の会社のために故郷の漁村の生活
を破壊され、やむなく東京へ出てきた。
だが元蔵は、春吉の会社の建設現場で働くうち、春吉の父と衝突してクビに
なってしまう。
そのとき居合わせた麗子(入江たか子)は、たくましい元蔵に関心をもつ。
ある日、社交界の連中が遊山気分で深川の貧民街へ慈善品を配りに行くが、
そのとき麗子は元蔵から、働く力も生活力もない木偶人形だと罵倒される。
その後、経済恐慌が起こり、会社は破産し、春吉の家は没落する。
一方、お染は元蔵と共に、新しい生活に入る。
大都会の資本家と下層労働者を対比的に描き、資本主義社会の欺瞞と貪欲を暴露した作品。
昭和初期、世界的不況を受け、失業者が巷に溢れ、東北の農村では娘の身売りが行われ、
社会主義団体が活動したが抑圧され、暗い時代が予感された。
このような時期に、左翼的題材を掲げて制作された本作「都会交響楽」は、試写を見た
批評家や文学者たちから絶賛された。
だが、検閲で上映禁止か撮り直しを迫られ、漁業会社の進出で網元の生活が破壊されて
抗議するシーンなど、労働者の闘争や苦境を描いた部分を30分程カットして撮り直した。
こうして本作は、著しく原型を損なった形で世に出ることになったが、当時の検閲制度が、
映画改悪機関である事を執拗に教える作品として、かえって高い評価を得ることになった。
製作 日活
監督 溝口健二 原作 片岡鉄兵
配役 | お染 | 夏川静江 | 藤井金之助 | 高木永二 | |||||||||
元蔵 | 小杉勇 | 藤井春吉 | 一木札二 | ||||||||||
麗子 | 入江たか子 | お仙 | 滝花久子 | ||||||||||
大池伝右衛門 | 山本嘉一 |