東京の合唱(コーラス) 1931年(昭和6年) 邦画名作選 |
岡島伸二(岡田時彦)は、ある保険会社に勤務するサラリーマン。
ある日、同僚が仕事上のミスから不当に解雇されると聞き、納得できず社長に抗議する。
興奮した岡島は、つい社長に手を出してしまい、即刻解雇されてしまう。
失業した彼は、子供(高峰秀子)が病気になっても医者に診せる金が無い。
やむなく妻(八雲恵美子)の着物を入質して医者代にするのだった。
岡島の仕事探しは続いたが、偶然中学時代の恩師(斎藤達雄)にばったり出会った。
恩師は教職を退いて、今はカレー屋を開いており、良かったら仕事を手伝ってくれないかと言う。
大学卒の自分としては納得できなかったが、やむを得ず手伝うことにした。
やがてカレー屋で働く姿を妻に見られてしまったが、彼女もその仕事を手伝うと言い出した。
それからまもなく、恩師のカレー屋に、昔の教え子たちが集まって、同窓会が開かれた。
席上岡島には、地方の女学校に教員としての仕事が見つかったという知らせが届いた。
同窓会は一転して、岡島の新しい門出を祝う送別会になったのである。
同僚の解雇に抗議して自分もクビになったサラリーマンの悲哀を、コミカルな演出も
交えて描いた小津安二郎第22作目の監督作品。
長女(7歳)に扮するのは子役時代の高峰秀子。
本作が公開された1931年当時は、前年から始まった世界的経済恐慌のあおりを受けて、
日本にも深刻な不景気の波が押し寄せていた。
大学卒のインテリといえども、失業すれば、カレー屋の店員でも何でもしなければ
ならなかった時代であった。
本作は、そんな時代背景を反映して制作された小市民(サラリーマン)映画である。
そして主人公・岡島が出遭う様々な困難にもかかわらず、全体としては明るく、
希望が持てる映画になっている。
製作 松竹
監督 小津安二郎
配役 | 岡島伸二 | 岡田時彦 | 大村先生 | 斎藤達雄 | |||||||||
妻すが子 | 八雲恵美子 | 先生の妻 | 飯田蝶子 | ||||||||||
その長男 | 菅原秀雄 | 山田 | 坂本武 | ||||||||||
長女 | 高峰秀子 | 社長 | 谷麗光 |