東京のヒロイン 1950年(昭和25年) 邦画名作選
彭城範子(轟夕起子)は、自ら独身主義を標榜している雑誌記者である。
彼女は、話題の人気作家・吉岡花子の原稿を、何とか取ろうとしている。
そこで吉岡女史の雑誌社を訪ねるが、変な中年男(森雅之)に邪魔されて会えない。
館実と名乗るこの男は、どうやら吉岡女史を担当している雑誌記者らしい。
範子は館に、吉岡女史の住所を教えてくれるよう頼むのだが、相手にしてもらえない。
それもそのはず、吉岡女史の正体は、実は館で、吉岡花子は、彼のペン・ネームだったのだ。
戦後の雑誌ブームの世相を背景に、ライバル同士の男女の雑誌記者に芽生えた恋を描く。
この当時は、戦後の女性解放と自由恋愛を謳った恋愛小説が、軒並みベストセラーになった。
石坂洋次郎の「青い山脈」や獅子文六の「自由学校」などが映画化され、いずれも民主主義を
謳歌した作品として多くの観客の支持をえた。
本作「東京のヒロイン」の主人公・範子は、自ら独身主義をアピールしているが、これなども
自由な恋愛と結婚が可能となった戦後の民主主義化のたまものといえるだろう。
ヒロイン轟の相方が森雅之で、軽妙な都会的センスが活かされた一見の価値ある楽しい映画となった。
また轟の妹役で、この年デビューしたばかりの香川京子が、初々しく可憐な演技を見せている。
製作 新東宝
監督 島耕二