大川端にひとりの男の死体が上がった。
その男は、偽小判鋳造工場で無理やり働かされていた源太だった。
若衆姿で船頭をしていたお吉(美空ひばり)は、叔父の源太の死骸を見出し悲嘆にくれる。
そこへ現われた流し芸人新三こと銭形平次(長谷川一夫)。
かねて偽金造りに眼をつけていた平次は、お吉に協力を約束する。
源太の小判から偽金工場の場所に目星をつけた平次と子分のガラッ八は、現場へ赴くが…。
野村胡堂の原作を伊藤大輔が脚色、加戸敏監督による「銭形平次」シリーズの一作。
1931年(昭和6年)文芸春秋に連載された「銭形平次捕物控」は、神田明神下に住む岡っ引の平次が、
子分の八五郎と共に卓越した推理力を駆使し、事件を鮮やかに解決していく痛快娯楽捕物帳である。
戦前の映画では、1931年から嵐寛寿郎をはじめ名だたる時代劇スターによって平次が演じられている。
戦後は、大映の長谷川一夫の当たり役となり、1949年(昭和24年)から1961年まで12年間にわたり、
18作品が製作される人気シリーズとなった。本作はその第11作に当たる。
まだら蛇の刺青をした男が殺されたことが発端となり、受刑者を使った偽金造り事件を平次が暴き、
首謀者である悪徳商人と勘定奉行の一味を懲らしめるというストーリーである。
本作で平次の片腕となって活躍するのが、若い船頭・お吉に扮した当時20歳の美空ひばりである。
少女の清純さと大人の妖艶さが共存する彼女の男装は、えも言われぬ妖しさを醸し出している。
後半では和服姿も披露しているが、美人の代表と言われる山本富士子と並んでも遜色ない佇まいは、
さすが天下の美空ひばりである。
製作 大映
監督 加戸敏 原作 野村胡堂
配役 | 銭形平次 | 長谷川一夫 | 喜久江 | 山本富士子 | 桂周庵 | 山茶花究 | ||||||||||||||
八五郎 | 堺駿二 | お絹 | 木暮実千代 | 大沼玄蕃 | 荒木忍 | |||||||||||||||
お吉 | 美空ひばり | 笹野新三郎 | 黒川弥太郎 |