Top Page    中国語講座


上級篇は中国語を一定期間学び、基礎文法と簡単な日常会話を
マスターした方々を対象にしています。

本篇の課文は主として中国本土で放映された 「映画」 や 「ドラマ」 を
題材として編集しました。

臨場感のある生の中国語に触れ、しかも面白く学ぶには、映画やドラマの
シナリオは絶好の教材であるように思います。

第一課は、2013年に公開されたディズニーアニメ 「アナと雪の女王」 (Frozen)
の原作(著者 Sara・Nathan) をテキストとしています。

ビデオも市販されていますので、ひととおり見て物語の筋を理解しておけば、
さらに学習効果が高まると思います。


(あらすじ)  アレンデール王家の姉妹、エルサとアナ。

触れるもの全てを凍らせてしまう「禁断の力」を持つ姉エルサは、妹アナを
傷つけることを恐れて、幼い頃からその力を隠し続けてきた。

だが、エルサが新女王となる戴冠式で、彼女は「禁断の力」を制御できず、
夏の王国を真冬に変えてしまう。

城から逃亡した彼女は、禁断の力を思うがまま解き放ち、一人だけの雪と
氷の城を作り上げる。

一方、妹のアナは、雪と氷の世界に閉ざされてしまった王国を救うため、
山男のクリストフとトナカイのスヴェンと共にエルサが築いた氷の城へ向かう…。


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【第一課 第一節】

「冰雪奇缘」  (一)  莎拉・内森

序幕

在遥远的北欧,有一个王国,叫艾伦戴尔。
它的城堡坐落在峡湾里,峡湾四周屹立着陡峭的群山。

在夕阳映照的山脚上,有一群强壮的男人在不辍 chuò 劳作着。
他们被称作采冰人,负责从山顶的湖中凿下大块的冰,再运往山下。

马儿有序地站在一旁,等待一辆辆空马车被装满。
一个小男孩站在背阴处注视着采冰人,身边还有一辆小雪橇 qiāo。

男孩名叫克斯托夫,他非常渴望加入采冰人的队伍,但他实在太小了。
站在他身边的是他的好朋友——小驯鹿 xùn lù 斯文。

克斯托夫幻想着他驾着斯文,拉着满载冰块的雪橇冲向艾伦戴尔的村庄。
斯文嗅了嗅寒冷的空气,又瞥了一眼采上来的大冰块,这些冰块看上去非常沉重。

这时,大人们已经点亮几盏灯笼,马上就装好一车车冰块。
克斯托夫悄悄地走上前,成功抢到一小块冰块,好不容易才将这块冰搬上雪橇,然后系上了斯文的套索。

采冰人拉着一车车的冰块向山下前进。
克斯托夫与斯文跟在后面,他赶着自己的小车,行驶在崎岖 qí qū 的山路上。

头顶上,北极光照亮了黑暗的天空,神秘的绿光像薄纱一般笼罩着群山,一路绵 mián 延到山脚下的艾伦戴尔王国。



第一章

在深深的峡湾边,有一片绿草如茵 yīn 的山谷,夜晚的艾伦戴尔城堡静静地沉睡着。
北极光明亮的光束跳进窗户,叫醒了窗前的小女孩。

她跳下床,蹑 niè 手蹑脚地跑到了姐姐的床边,趴在姐姐耳边轻声说,
“快醒醒!艾莎 ài shā,快醒醒!”

艾莎躲在被子里,嘟囔道, “安娜 ān nà,快回去睡觉。” 

可是安娜没有就此放弃。她整个身体压在艾莎身上说, “我睡不着。天还醒着,我也醒着,所以我们快去玩吧。”

“自己玩去吧,” 说着,艾莎一翻身把妹妹推下了床。

安娜 “咣” 的一下掉在地板上,叹了口气。忽然,灵机一动,想出了一个诱惑姐姐的妙计。

“你想不想堆雪人?”

艾莎一下睁开了双眼。成功了! 这个提议吸引了她。

这两个小女孩是艾伦戴尔国王和王后的女儿。艾莎八岁,安娜五岁,相差三岁的姊妹俩是最要好的朋友。

姐妹俩穿着睡衣沿走廊一路欢笑着往前跑。她们溜进了举办皇家舞会的大厅,姐妹俩面面相对。

“用魔法!快用魔法!” 安娜满是期待的对着艾莎催促说。

“准备好了吗?” 艾莎微笑着问道。

“好了,好了!” 安娜大声喊道,伸手去挠艾莎痒痒。

艾莎咯咯地笑着,挥手施放魔法。只见几片雪花从她手心四散开来,旋转 xuán zhuǎn 飞舞,凝为雪球。

安娜跳着拍起了小手。 “太神奇了!”

安娜知道姐姐有很特殊的能力:她可以变出冰雪,即使是在仲夏 zhòng xià 也可以!

艾莎挥舞着双手,神奇的魔法从她的掌心 zhǎng xīn 流出,亮晶晶的雪花在空中飞舞,不一会儿,大厅就变成了一片白茫茫的雪原。
接着,艾莎用力跺 duò 了跺脚,整个地面就结冰了。

看到安娜在冰天雪地里手舞足蹈,艾莎也笑开了花。

她们俩一起开始堆雪人。
安娜使出全身力气滚出了雪人的身体,然后又跑去找来了一根胡萝卜给它当鼻子。

“雪人!” 她骄傲地喊道。

艾莎看着这个不对称的雪人笑了。

“你好,我是奥拉夫 ào lā fū。” 她压低嗓音 sǎng yīn 学着小雪人的口吻说道,“我喜欢热情的拥抱。”

姐妹俩围着滑稽 huá jī 可爱的雪人翩翩起舞。

接着,艾莎用冰雪魔法做了一座高高的冰滑梯。
安娜激动地尖叫着。

她爬上滑梯顶端,飞速地滑了下来,又借着冰梯的弧度 hú dù 飞到了半空中。
在安娜落下来之前,艾莎瞬间又变出了另一座冰滑梯来接住她。

安娜加快了速度,又被扔了上去。
“安娜,慢点儿,”艾莎喊道,她开始有点担心了,“太高了!”

安娜却玩得不亦乐乎。
小公主胆子可大了,艾莎一变出新滑梯,她就迅速跳上去再滑下来。

艾莎正要抬起手变出一座新滑梯,突然脚底一滑。
她跌倒的一瞬间,魔法也改变了方向,正好穿过安娜的卷发,击中了她的头部。

安娜倒吸一口气,昏倒在地。

“安娜!”  艾莎惊恐地叫着跑向了妹妹。

她扶起安娜,感觉到她冰冷的身体在颤抖 zhàn dǒu。安娜头上被魔法击中的地方,一绺 liǔ 头发变白了。

“妈妈!爸爸!”  艾莎拼命地哭喊起来。

随着艾莎的哭喊,她内心越来越害怕,天花板上形成了一个个冰锥 bīng zhuī,尖锐的冰柱在姐妹俩周围拔地而起。

国王和王后冲进大厅,发现女儿们蜷缩 quán suō 在冰天雪地里。
他们知道艾莎有变出冰雪的特殊能力,但眼前的场景却是他们从未见过的。

“艾莎,”国王喊道,“怎么会变成这样!”

“对不起,”艾莎难过地回答说,“我不是故意的!”

“安娜!”  王后慌忙跑去抱起了小女儿。


城堡的图书馆漆黑一片,但国王知道他要找的东西:一本古书,上面记载着几个世纪以前医治魔法创伤 chuāng shāng 的办法。

他找到后立马从书架上拿了下来,很快地翻到了要找的那部分,书上画着一个地精,手中好像握着一束北极光。
一个受伤的人安静地躺在他面前,地精在用北极光为他疗伤 liáo shāng。

国王翻过这页,发现了一张夹在书里的折叠起来的纸。
他小心翼翼地打开了这张已经泛黄 fàn huáng 的地图。

时间紧迫,国王和王后立即披上斗篷 dǒu péng,再下令备好马匹。
国王一家匆匆离开了城堡。王后带着艾莎骑上了自己的马,国王则怀抱着安娜,快马在山间疾驰。

克斯托夫和斯文在北极光的指引下,沿着崎岖的山路前进。
但是听到疾驰的马蹄声逐渐靠近,他们警觉地躲到了路边,只见马匹疾驰而过,身后留下了一路冰雪。

出于好奇,克斯托夫和斯文跟着马队一路来到了一片山岭上。
他们俩躲在一块石头后面偷偷观察着,马匹嘶叫着停了下来。

国王的肩上靠着一个小姑娘,王后怀里紧紧地抱住一个昏昏沉沉的小女孩。

“求求你!”  国王高声呼喊道,“救救我的女儿!”

起初山坡上还是空荡荡 kōng dàng dàng 的,这时一堆石头滚落了下来。
突然间,石头纷纷伸出手脚,站了起来,变成了灰色的小精灵!

“是地精。”  克斯托夫对斯文小声说。

这时候,克斯托夫身边的一块石头跳了起来,变成了一个长满苔藓 tái xiǎn 的女性地精。
她的名字叫惠达 huì dá。

“嘘,”惠达心不在焉 xīn bú zài yān 地对克斯托夫说,“我想要听听。”

这时,惠达猛地回过神来,仔细打量着克斯托夫,这才意识到他原来不是地精。

她笑嘻嘻地给了克斯托夫和斯文一个热情的拥抱。“小可爱!我要收留你们做宠物 chǒng wù”

在山谷里,一位非常年长的地精,佩比 pèi bǐ,穿过众地精走过来注视着两位公主。
他先看着艾莎。

“她是天生就有魔力,还是受到了诅咒 zǔ zhòu?” 他直来直去地问。

“天生的,”国王回答道,“而且现在魔力变得越来越强了。”

地精点点头,又看了看安娜,她仍然昏迷着。

“幸好没有伤到心脏,如果心受到了伤害,就很难治好了,头部的问题还是可以治好的。”

他停顿了一下,继续说道,“安全起见,我们必须消除所有的魔力,包括所有关于魔法的记忆。”

国王点点头,说, “按照您说的做吧。”

地精用手指轻轻地摸了摸小安娜的额头,就把一连串栩栩如生 xǔ xǔ rú shēng 的记忆从她脑海里抹掉 mǒ diào了。
随着地精把这些记忆变成更具体的景象,这些记忆一幕幕展现在天空中。

安娜不再记得舞会大厅里的神奇雪人,只记得冬日院子里的景象;不再记得走廊里的雪花,只记得窗外飘落的雪花。
她与艾莎一起度过的奇妙时刻都被消除了,取而代之的都是普通的欢乐时光。
这次意外唯一留下的就是她头上的一绺白发。

“好了,” 佩比最后说道, “她只会记得快乐时光,但不会记得魔法。”

“她不会记得我有魔法吗?” 艾莎问道。
“是的。” 佩比说道。
“这样最好。” 国王告诉她。

“听我说,艾莎,” 佩比说道,“ 你的魔力只会越来越强。它创造出的冰雪很美,但也隐藏着巨大的危险。”

地精边说边用魔法在天空中变出了成年艾莎的样子。
在美丽雪花的环绕下,艾莎的幻象优雅地旋转着。

突然间,雪花变成了尖锐的冰柱。
紧接着,一群人围到艾莎身边——人们用冰尖作武器,攻击艾莎发光的肖像。

“你必须学会控制你的魔力,” 佩比继续说道,“ 恐惧将是你最大的敌人。”

国王紧紧地搂住艾莎说,
“我们会保护她的,”他允诺 yǔn nuò 道,“我们会关闭所有的大门,减少仆人 pú rén,不让任何人知道她的魔力,包括安娜。”


回到城堡后,国王和王后立即下令关闭城堡的大门。
所有的门都被关上,窗户也都紧闭,他们让女儿们与外界隔绝,拒绝一切访客。

一家人都隐居起来,深居在高墙包围的王国里。
国王和王后在城堡里行事小心谨慎。

随着公主们渐渐长大,她们的父母尽一切所能确保艾莎能够自我克制。
这就意味着姐妹俩基本不待在一起。

艾莎也不会找安娜出去,因为她害怕会不小心伤害到妹妹。


日子一天天过去了,艾莎大部分时间都在接受训练,学习如何治理国家——并学习控制魔力。
训练的过程很困难,只要在她笑或哭或沮丧 jǔ sàng 的时候,她的指尖似乎就会结冰。

因为担心女儿的魔力,国王给了艾莎一副皮手套。
他建议女儿一直戴着手套,并提醒她出于安全考虑,必须隐藏冰雪魔力。

时间过得很快,安娜大部分时间都是一个人度过的。
有时她会和洋娃娃玩,有时她试图和画室里的肖像画聊天,但她很孤独。

她一次次地敲艾莎的房门,求姐姐出来跟她一起玩耍,但艾莎从未答应过。
关于和姐姐一起亲密玩耍的记忆逐渐模糊 mó hú 了。


一天,安娜从窗口向外望去,看见皇家花园里下起了雪。
她沿着走廊跑向姐姐的房间。

“你想堆雪人吗?” 她隔着紧闭的大门对姐姐喊道。

里面没有回应,房门也没有打开。
最后,安娜独自走到院里,试着自己堆雪人。

在滚了一个不对称 duì chèn 的雪球之后,她抬眼瞥见 piē jiàn 了艾莎房间的窗户,好像看到有人在对她微笑。
但是当她再看一眼的时候,却没了人影。

因为完全不记得艾莎的魔法了,安娜丝毫不知道为什么她总是一个人。
慢慢地,她开始认为姐姐就是这样一个冰冷的人。

艾莎多么渴望和安娜一起玩耍,却害怕她的魔法会误伤到妹妹。

“我很害怕,”一天艾莎告诉父亲,“魔力越来越强了。”

“焦虑 jiāo lǜ 只会让情况变得更糟,”国王提醒道,“冷静点,” 国王伸出双臂想要拥抱她。

“不,”她断然说道,“别碰我。”


多年以后的一天,姐妹俩长成了亭亭玉立的少女,国王和王后计划乘船出访另一个国家。
像以往那样,他们和女儿们拥抱告别,把女儿们留在了家里。

但是这一次,国王和王后再也没有回来。暴风雨吞没了他们的船,他们遭遇了海难。
整个王国为其君主的离去而陷入了哀伤。

安娜悲伤欲绝,感觉自己被痛苦彻底击垮了。
无处可去的她只能再次敲响艾莎的房门。

“艾莎?你没事吧?我就在外面。” 安娜说道。

但和往常一样,依旧没人回应。
安娜滑坐到地上,伤心地倚靠在房门上,说道, “现在就剩我和你了,我们该怎么办呢?”

房间里的艾莎也非常伤心,但她不能开门。
她只能背靠着紧闭的房门,默默地哭泣。
在她周围,冰雪填满了整个房间。

三年之后,艾莎二十一岁那年,她将成为艾伦戴尔的新任女王。
整个王国都沸腾 fèi téng 了。
因为这么多年来第一次,也仅仅在这一天,城堡的大门会向全国人民和邻国开放。
这将是艾伦戴尔史上令人难忘的庆典。

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【注 釈】


【冰雪奇缘】 bīng xuě qí yuán  「アナと雪の女王」 (Frozen)
2013年公開のディズニー・アニメ。
アレンデール王国の若き女王エルサは、雪と氷をあやつる魔法の力で真夏の王国を凍りつく冬の世界に変え、氷の宮殿に閉じこもってしまう。
妹のアナは、姉を連れ戻すため、極寒の雪山へ向かうが……。

【莎拉・内森】 suō lā nèi sēn  サラ・ネイサン (Sara・Nathan)
アメリカの童話作家。「アナと雪の女王」 はディズニー・アニメを子供向けにノベライズしたもの。
他の代表作に 「ティンカー・ベルと輝く羽の秘密」 (Secret of the Wings) など。

【艾伦戴尔】 ài lún dài ěr  アレンデール (Arendelle)
【峡湾】 xiá wān  フィヨルド (Fjord) 氷河に削りとられた海岸の入り江。

【不辍劳作】 bú chuò láo zuò   休まず働く。(不停地劳动)(hard at work)
【有序地】 yǒu xù de   整然と。足並みをそろえて。(有规则的)(in orderly rows)

【背阴处】 bèi yīn chù   日陰。ものかげ。(背地里) (in the shadow of )
【雪橇】 xuě qiāo   雪ぞり。 (sled)

【克斯托夫】 kè sī tuō fū   クリストフ 。(Kristoff)
【驯鹿】 xùn lù   トナカイ。 (reindeer)

【斯文】 sī wén   スヴェン。 (Sven)
【套索】 tào suǒ   ハーネス。 胴輪。(harness)

【崎岖】 qí qū  険しい。 (高低不平)(bumpy)
【北极光】 běi jí guāng   オーロラ。(aurora)

【绵延】 mián yán   延々と続く。 (延续不断)(extending)
【绿草如茵】 lǜ cǎo rú yīn  緑の敷物のような。(草十分茂盛,像绿毯一般柔软)(like a carpet of green grass)

【蹑手蹑脚】 niè shǒu niè jiǎo   抜き足差し足で。 (脚不出声地) (walk on tiptoe)
【艾莎】 ài shā   エルサ。 (Elsa)

【安娜】 ān nà   アナ (Anna)
【嘟囔】 dū nang   つぶやく。 (自言自语)(grumble)

【奥拉夫】 ào lā fū   オラフ (Olaf)
【一绺】 yì liǔ  ひと束の。(量詞)髪の毛を数える。

【蜷缩】 quán suō 縮こまる。(缩成一团)(huddle up)
【地精】 dì jīng  トロール。(Troll)
アレンデールの山間に住む妖精。
一見、ただの岩にしか見えず、心を開いた相手にだけ姿を現わす。

【苔藓】 tái xiǎn   コケのついた。(长着苔的)(covered with moss)
【惠达】 huì dá   ハルダ。 (Hulda)

【心不在焉】 xīn bù zài yān 上の空で。(视而不见,听而不闻)(absently)
【佩比】 pèi bǐ パビー。 (Pabbie)

【栩栩如生】 xǔ xǔ rú shēng   生々しい。脳裏に焼き付いた。(活泼生动的) (vivid and lively)
【允诺】 yǔn nuò 誓いを立てる。(约定)(promiss)

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【口語訳】

アナと雪の女王 (一)


プロローグ

はるか北欧に、アレンデールという王国がある。
城はフィヨルドに囲まれ、さらにフィヨルドの周囲には、険しい山々がそびえ立っている。

夕日で赤くそまった山の麓では、たくましい男たちがグループにわかれ、一心不乱に作業を続けている。
彼らは 山の湖に張った大きな氷のブロックを切りだし、麓の町に送り届ける 「氷職人」 たちだ。

馬たちが一列につながれ、一台一台の荷台に氷がいっぱいに積まれるのを待っている。

ひとりの少年が、ものかげから氷職人たちを見つめていた。
彼のかたわらには一台の雪ぞりが置いてある。

少年の名前はクリストフ。
氷職人たちの仲間入りをしたいと望んでいたが、彼はあまりにも幼すぎた。

クリストフにぴったり寄りそっているのはトナカイのスヴェン。
彼らは仲の良い友だちだった。

クリストフは、氷のブロックをいくつも積んだそりをスヴェンに引かせ、
アレンデールの町に向かっていく自分の姿を想像し胸を高鳴らせていた。

冷たい大気を嗅ぐように鼻をヒクつかせると、スヴェンは大きな氷の塊にちらりと目をやった。

「ぼくにはちょっと重すぎるよ」 とでもいいたげなそぶりを見せる。

氷のブロックが荷台に山と積まれ、今日の作業が終わりに近づくと、大人たちはランタンに火をともした。

クリストフはそっと前にすすみでて、小さな氷のブロックを取り上げると、
なんとかそりの上に乗せ、スヴェンの体とそりをロープでむすんだ。

一台、また一台と、氷のブロックを積んだ男たちのそりが山道に乗り出していく。
クリストフとスヴェンも、自分たちのそりを操りながら、大人たちのあとについて山道をすべりおりていった。

頭上では、漆黒の夜空にオーロラが舞っていた。

山々を覆うオーロラのベールが、緑色の光を妖しく放ちつつ、
まっしぐらに麓のアレンデールの王国に向かって広がっていった。



第一章

奥深いフィヨルドのほとり、緑豊かな峡谷に建つアレンデールの王城は、
夜のとばりに囲まれて安らかにまどろんでいる。

オーロラの明るい光に誘われ、窓際のベッドに寝ていた少女の目が、パチリと開いた。

彼女はベットから飛び降りるやつま先立ちになり、姉のベッドに走り寄って、眠っている姉の耳元にささやきかける。

「起きて、エルサ、ねぇ、起きてよ!」

「アナ、自分のベットでお眠りなさいよ。」 姉のエルサは布団の中でモゴモゴつぶやいた。

妹のアナはあきらめない。彼女は寝ているエルサの上に飛び乗って言う。

「眠れないよ。お空が起きたから、私も起きるの。一緒にあそぼ。」

「ひとりで遊んだら。」 エルサは寝返りをうち、妹をはねのけた。

ドスン、と床の上に倒れ込んだアナはため息をつく。
ふと、姉を誘い出す、とっておきの名案がひらめいた。

「……雪だるま、作らない?」

エルサの目が、パチッと開く。
やった! お姉さまの気を引くのに成功したわ!

この二人の少女はアレンデールの国王と王妃の娘たちだった。
エルサは八歳、アナは五歳、三つ違いの姉妹はとても仲が良かった。

姉妹二人はパジャマを身につけ、はしゃぎながら城の廊下を走った。
二人が向かった先は、王室主催の舞踏会につかわれる大広間だった。

「まほうをやって、まほうをやって!」 アナはわくわくしながらエルサにせがんだ。

「準備はいい?」 エルサはほほえんで尋ねる。

「やって、やって!」 アナは大声で叫ぶと、手を伸ばしてエルサをくすぐる。

エルサはクスクス笑いながら、手を振って魔法を開始した。
すると彼女の掌から数切れの雪の結晶が吹きだして、くるくると渦を巻きながら雪玉ができあがる。

「すてきっ!」 アナが嬉々として手を叩いた。

アナは自分の姉が不思議な力をもつことを知っていた。
彼女は氷と雪を操ることができるのだ。たとえ真夏であろうとも。

エルサが両手を振ると、魔法の雪しぶきが空中に舞いあがり、大広間は見る見るうちに一面の雪景色に変わった。
続いて、エルサが力を入れて足を踏みしめると、大広間の床が真っ白に氷結した。

雪と氷の大地で躍り上がって喜ぶアナの顔を見て、エルサはにこやかに微笑んだ。

二人はいっしょに雪だるまづくりにとりかかった。

アナはせっせと雪をころがして雪だるまの胴体をつくる。
それから一本のニンジンを探してきて雪だるまの鼻にした。

「雪だるまの出来上がり!」  彼女は得意そうに叫ぶ。

エルサは不格好な雪だるまを見て笑った。

「ども、ぼくはオラフだよ。」  アナが低い作り声でいう。 「あったかいハグが大好き!」

二人はなんともかわいらしい雪だるまを囲んで軽やかに舞い踊った。

続いて、エルサは雪と氷の魔法で氷の滑り台をつくる。
アナが大喜びで声をあげた。

彼女は滑り台のてっぺんに登ると、飛ぶように滑りおりる。
そして、すべりおえた勢いでぽーんと宙に飛び上がる。

アナが落ちる前に、エルサはすばやく次の滑り台をつくり、落ちてくるアナを受け止めた。
アナはどんどんスピードをあげて、また宙に飛び出す。

「アナ、スピードを落として!」  ひゃっとしたエルサが叫ぶ。  「高すぎるわ!」

しかし、すっかり夢中になっているアナの耳にはとどかない。
おさない王女はこわいもの知らずで、エルサのつくる滑り台に次々に飛びうつっていく。

次の滑り台をつくろうとエルサが手をあげたときだった。
凍った床に足をすべらせてしまった。

つまずいて転んだ瞬間、魔法も方向を変え、アナの巻き毛を横切って、彼女の頭部に命中した。
アナはフーッとひと息吸い込むと、気を失って倒れ込んだ。

「アナ!」  驚いたエルサが妹のもとへ駆けよる。

抱き起したアナの体は冷たく、小刻みに震えていた。
魔法に打たれた頭の部分の髪の毛が真っ白に変わっている。

「お父様!お母様!」  エルサは泣き叫んだ。

途方にくれたエルサが泣き出すと、天井からつららが垂れさがり、
床からは鋭い牙のような氷が突き出して姉妹二人を取り囲んだ。

国王と王妃が大広間に駆けつけると、雪と氷の世界で身動きできずにいる娘たちを発見した。

彼らはエルサが雪と氷の特殊な力を持っているのは知っていたものの、
目の前のこのような光景はこれまで見たことがなかった。

「エルサ!」  国王が叫んだ。  「いったいどういうことだ!」
「ごめんなさい。」  エルサが悲しそうに答えた。  「こんなつもりじゃなかったの!」

「アナ!」  王妃はあわてて走りよっておさない娘を抱きあげた。


城内の図書館はうす暗かったが、求めるものがここに収蔵されているのを、国王は知っていた。
魔法の傷をいやす方法が記載されている何世紀も前の一冊の古書である。

王は目あての本を見つけると、棚から取り出して素早くページをめくり、必要な項目を開いた。
そのページには一体のトロールが描かれ、そのトロールは手の中にひと束のオーロラを握っているようにみえる。

トロールの前には傷ついた人間が力なく横たわり、オーロラのまじないによる治療を受けていた。

王がさらにページをめくると、折りたたまれた一枚の紙が本に挟まれているのを見つけた。
注意深く広げてみると、それは黄ばんだ古い地図だった。

時間は緊迫していた。王と王妃は直ちにマントをはおり、衛兵に馬の用意を命じる。
国王一行は慌ただしく城を離れた。

一頭には王妃とエルサが、もう一頭にはアナを抱えた王が乗っている。
二頭は山間の道を猛スピードで駆け抜けた。

クリストフ少年とトナカイのスヴェンはオーロラの導くまま、岩だらけの山道を歩いていた。
ふと荒々しいひずめの音がものすごい勢いで迫ってくる。

彼らが急いで道端に身をかくすと、疾走する人馬が氷の煙りを巻き上げながら二人の前を駆け抜けていった。
好奇心にかられたクリストフとスヴェンは馬を追いかけた。

山の尾根までさしかかると、二人は岩かげにかくれ様子をうかがった。
馬がいなないて止まり、王と王妃が降りたった。

王の肩にはエルサがしがみつき、王妃は意識のないアナを固く抱きしめる。

「頼む! どうか助けてくれまいか、私の娘を!」  王が声を張り上げた。

すると静まりかえっていた山の斜面から、ひとかたまりの岩石が転がり落ちてきた。
なんと、それらの岩石から次々と手足が生え、灰色の生き物が起き上がったのだ。

「トロールだ!」  クリストフはスヴェンに小声で言う。

その瞬間、クリストフのかたわらの岩が跳ね上がり、苔だらけの女性のトロールになった。
彼女の名前はハルダといった。

「しーっ!」  ハルダはぶっきらぼうにクリストフをしかりつけた。  「話が聞こえないじゃない。」

ふと、クリストフをまじまじと見つめたハルダは、相手がトロールでないことにおそまきながら気がついた。

彼女はニッコリ笑うと、クリストフとスヴェンを抱きしめた。
「アラかわいい! あたしがもらっちゃうわ!」


谷底では、仲間たちの間をぬって、ひときわ年かさのトロールが国王一家の前に進み出てきた。名はパビーという。
彼はまずエルサに目をやった。

「この娘は魔法の力を持って生まれたのかの、それとも呪いをかけられたのかの?」
パビーは単刀直入に尋ねた。

「生まれつきです。」  国王が答えた。
「そればかりか魔力は日増しに強くなっているようです。」

トロールはうなづくと、視線を意識のないアナに移した。

「魔法にやられたのが心の臓でなくて幸いじゃった。
心臓がやられては手のつけようがないが、頭ならばなんとか手立てがある。」

しばらく考えてから、パビーは言葉をつづけた。
「魔法の記憶そのものを含めて、すべての魔力を取り除いてしまうほうが安心じゃろう。」

国王はうなずいた。「必要なことは、なんでもやっていただきたい。」

トロールはアナの小さな頭にそっと指をあて、彼女の脳裏に焼きついた記憶を次々と消し去っていった。
続いてトロールはこれらの記憶を具体的な光景に変えた。

それらの記憶の一つひとつが天空に映し出される。

アナはもう舞踏会の大広間で、不思議な雪だるまを作ったことを覚えていない。
ただ中庭の冬景色だけを記憶している。

すでに城の廊下の雪と氷を覚えていない。
ただ窓の外に舞い落ちる雪のかけらだけを記憶している。

彼女がエルサと一緒に過ごした魔法の時間はすっかり消え去り、平凡なひとときに塗り替えられていく。
今回の魔法の唯一の痕跡は、アナの髪の毛に残った白い一房だけとなった。

「ようし。」  すべて終わるとパビーが言った。
「この子は楽しかったことは覚えとるが、魔法についてはきれいさっぱり忘れた。」

「私が魔法を使えることも忘れちゃったの?」  エルサが尋ねる。
「ああ、そうだ。」  パビーが答える。
「それが一番、アナのためなのだよ。」  王がエルサにいい聞かせる。

「お聞きなされ、エルサ。」  パビーが言う。

「お嬢ちゃんの魔法の力は、これからどんどん強くなるばかりじゃ。
魔法の創りだす雪と氷は美しいものじゃが、しかしそれは極めて危険なものが含まれている。」

トロールはそう言いながら、成長したエルサの姿を空中に映しだした。
ひらひらと美しい雪片のめぐるなか、エルサのシルエットが優雅に躍動している。

突如として、雪片は鋭い氷のトゲに変貌した。
続いて、氷で作った武器を持った群衆がエルサを攻撃する場面が映しだされる。

「魔法を抑える力を学ばねばならない。」  パビーは続けて言った。
「恐怖が、お嬢ちゃんの最大の敵となるじゃろう。」

国王がエルサをしっかりと抱きよせて言った。
「私たちが娘を守ってみせる。城の門を閉ざし、召使いたちには暇を出そう。
エルサの力は人の目に触れさせぬ、アナからもだ。」


城に戻ると、国王夫妻はただちに城門を閉じるよう命じた。
すべての扉は閉じられ、窓という窓もことごとく閉められた。

夫妻は訪問客の受け入れをとりやめ、娘たちを外界から隔離した。
国王一家は人目を避けるようになり、高い城壁の内側に引きこもった。

王と王妃は、城の中でも用心深く振る舞った。
娘たちの成長に伴い、夫妻はエルサが自らの力を抑えることができるよう万全を尽くした。

姉妹二人は引き離され、別々の部屋で暮らすようになった。
エルサはアナを避けるようになった。うっかり妹を傷つけることを恐れるためだった。


一日一日が過ぎて行った。エルサの多くの時間は王国を治めるための学習に費やされた。
と同時に、魔力を制御する方法を見つけようと努力した。

しかし、それはたやすいことではなかった。
彼女が笑ったり泣いたりして、心がみだれると、たちまち手の先から雪や氷があらわれてしまうのだ。

娘の魔力を心配した王は、エルサに一対の皮の手袋を手渡した。
彼は娘にずっと手袋をはめているように忠告した。
手を隠していれば、雪や氷を呼び出す力も弱まるのではないかと思ったからだ。


日々が過ぎ、アナはいつしかひとり遊びの達人になっていた。

時には人形と遊び、時には絵画室で肖像画に話しかけたりしてみた。
しかし彼女はたまらなく孤独を感じていた。

アナはエルサの部屋の扉をノックしては、出てきて一緒に遊んでほしいと誘った。
しかし、姉は頑として応じようとはしなかった。

姉と一緒に仲よく遊んだアナの記憶はいつしか失われていった。


ある日、アナが窓の外を眺めていると、王室の花園に雪が降っているのが見えた。
彼女は廊下を抜け、姉の部屋まで一気に駆け寄った。

「雪だるま、作らない?」

彼女はぴったり閉まった大きな扉ごしに姉に呼びかける。
部屋の中からは返事はなかった、扉も開かなかった。

アナはあきらめて、ひとりで庭に出て雪だるまをつくりはじめた。
いびつな形をした雪玉をつくった後、彼女はエルサの部屋に目をやった。

誰かが優しい笑みを浮かべて自分を見つめているように感じたからだ。
しかしあらためて目を向けると、そこには誰もいなかった。

エルサの魔法のことを一切覚えていないアナは、姉のエルサが、なぜいつも一人きりなのかさっぱり理解できなかった。
やがて、エルサの冷やかさは、性分なのだと思うようになった。

エルサもアナと一緒に遊びたかった。
しかし彼女の魔法が妹を誤って傷つけることを恐れていた。

「私、怖くてしかたがありません。」 ある日エルサは父に打ち明けた。
「どんどん力が強くなっていくの。」

「動揺すれば、余計に悪化するだけだ。」 王が忠告した。「落ち着きなさい。」

王は両腕をひらいて娘を抱きしめようとした。

「ダメ!」 彼女は鋭い口調で言った。「私に触らないで!」


月日が流れ、姉妹二人は美しい少女に成長した。
ある日、国王と王妃は船で近隣の国を訪問することになった。

いつものように、彼らは娘たちと抱擁し別れを告げ旅だって行った。
しかし、国王と王妃は再び帰って来なかった。

暴風雨が夫妻を乗せた船をのみ込み、彼らは行方を断ってしまったのだ。
国王夫妻の訃報に王国中が哀しんだ。

アナは悲しみにうちひがれた。
彼女はいてもたってもいられず、いま一度エルサの部屋の扉をたたいた。

「エルサ、大丈夫? 私はここにいるわ。」 アナが呼びかける。

しかしいつものように、返事はなかった。
アナはその場にしゃがみこみ、力なく扉に頭をもたせかけ、つぶやいた。

「私たち、ふたりぼっちになっちゃった。これからどうしたらいいのかな?」

エルサもまた、部屋の中で悲しみにくれていた。しかし扉を開けることはどうしてもできない。

彼女はぴったり閉まった扉に身をよせ、そっとむせび泣いた。
彼女の周囲から雪や氷があらわれ、部屋を白く冷たい世界へと変えていった。


三年後、エルサは二十一歳となり、アレンデールの王位をつぐ年齢に達した。
王国中が興奮に沸き立った。

長い間閉ざされていた城門が、この日だけは全国の人民と隣国に開放されるのだ。
この日はアレンデール史上記念すべき祝典の日であった。