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フン族襲来の知らせを受け、宮殿の動きは、にわかに慌ただしくなりました。
しかし人々の生活には、まだ何の変化も見られませんでした。

春のおとずれとともに、大地ははなやかに色づき、光も日増しに暖かくなり、
人々の心も、自然に浮き立つ季節がやって来ました。

ここは皇帝の宮殿から遠くはなれた、ある小さな村。
名門の娘、ムーランが巻き物と首っ引きで、何やら下準備をしています。

実は、彼女は母親にお見合いを奨められていたのです。
この巻き物には、女性としての作法やたしなみが書きしるされていました。


       ( reflection   倒 影 )


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【第一課 第二節】

在古老的中国,有一位个性爽朗,性情善良的好女孩,
名字叫作 「花木兰」, 身为名门花家的独生女。
她父母希望把她嫁给一个好人家, 以便为能带来花家荣耀。

这天一大早,木兰就忙着在胳膊上写着什么。
那是因为今天要去见媒婆,如果她表现得好,就能攀上一门好亲事。

木 兰    : (看着书卷,边念边写) 妇德指品德,妇言注意辞令,
                妇容要端庄,守时间,哎呀!

(听到鸡叫,木兰爬了起来,急忙给父亲送去了茶。
她父亲正在花家的祠堂里祈祷祖先保佑木兰)

父 亲    :(跪在香案旁) 列祖列宗,求你们保佑木兰给媒婆留个好印象,
               求你们保佑她吧。

木 兰    :爹爹我给您,啊!

(一不小心, 啪嚓一声把茶杯掉在地上)

父 亲    :(一瘸一拐站起) 木兰!
木 兰    :我这还有一个!

父 亲    :木兰。
木 兰    :你听大夫说过了嘛,早上三杯茶。

父 亲    :木兰。
木 兰    :晚上三杯!

父 亲    :木兰,你早就该进城了,家里还指望你了。
木 兰    :我知道为花家光宗耀祖? 别担心爹爹。
              我不会让你失望的,祝福我吧。

父 亲    :(望木兰背影): 快去吧!
               我还得去,再求求祖宗。

(木兰的妈妈和奶奶在镇上等候多时了)

媒婆甲  :夫人,你女儿来了没有,媒婆她都快急了。
母 亲    :她准又把这个事忘了。噢,我得先求祖先保佑她。

奶 奶    :他们能保佑什么,他们在天上。
              不过我们有了个吉祥物。这就要看你的啦。
             
(这会儿,妈妈正惊讶地看着奶奶闭着眼睛穿过喧闹的街道)

母 亲    :婆婆小心!

(原来奶奶正在试验一只幸运蟋蟀是否灵验。
牛车、马车、手推车在奶奶周围穿梭来往,
可是奶奶还是很安全地走到了街对面)

奶 奶    :不错,这蟋蟀还真灵!

(这时候,木兰急忙骑上她心爱的汗马匆匆赶到镇上,
弄得浑身尘土,头发乱蓬蓬的)

木 兰    :噢,我来了。怎么,娘, 刚才 …
母 亲    :行了,快别说了。我先带你洗澡去。

(妈妈叹着气说。她急忙把木兰从马上拽下来,立刻带着她去梳妆打扮。
经过沐浴、更衣、盘发和化妆,木兰被打扮成大家闺秀的样子。

妈妈高兴地打量了一下木兰,然后给了她一把梳子。
这把梳子在花家已经传了几代人了)

母 亲    :好!全好了。
奶 奶    :还没有,吃口苹果,保平安,带上项链保平稳,带上这串玉珠,
              让你光彩夺目,让这只蟋蟀吉祥物给你好运和祝福。

木 兰    :老祖先,保佑我,千万不要让我出差错,
              不能有损传统的家风,爹爹会为我荣。

(木兰到达媒人家。她站在相亲队伍里,焦急地等着媒婆点她的名字。
一会儿一个肥胖的媒婆从房子里出来喊到)

媒 婆    :花木兰!
木 兰    :我在这儿。

媒 婆    :谁允许你说话了。
木 兰    :哦。

奶 奶    :准是谁又惹着她了。

(木兰跟随媒婆走进房子里。媒婆把木兰的服装仔细地检查了一遍)

媒 婆    :啊,嗯,太瘦了,哼,这个生不出个大胖小子来!
              三从四德的四德,你会背吗?快点背。

木 兰    :妇德指的是温顺,妇言是少说话,妇容,要端庄,
              还有妇功,会干活,一定要为家里争光。

(木兰赶紧撸起袖子偷看写在胳膊上的小抄)

媒 婆    :嗯,跟我来,现在,倒茶。
              要让将来的公婆喜欢,一定要表现得庄重,
              优雅,不仅要心存恭敬还要注意姿态。

(接下来,媒婆又考验木兰端茶倒水。
这时,那只蟋蟀不知道什么时候跑到杯子里去了)

木 兰    :啊,你,等一等。
媒 婆    :不许说话,啊!

木 兰    :你还是把它给我吧? 我再给你。

(木兰为了救它打翻了茶杯,溅出的热水烫得媒婆直跳脚)

媒 婆    :你这个笨手笨脚的,噢噢,哎呀!

奶奶    :里边一定挺顺利的,是吧!

(更糟糕的是,媒婆碰倒了炉子,烧着了衣服)

媒婆    :救火呀!来人呢?浇水呀!

(木兰急中生智,端起茶杯向媒婆身上泼去。
媒婆气急败坏地冲木兰大喊大叫)

媒 婆    :你可真丢人,不管你怎么打扮也不可能为你们花家争光,嗯。

(木兰骑上汗马回到家, 想到自己无心的过失给家族抹了黑,
木兰羞愧地抬不起头。

木兰抹掉脸上的胭脂,解开头上的发带,心里不禁叹息道:
自己永远无法成为大家闺秀。木兰伤心之下歌唱:)


             (歌唱  倒影)

             看看我,不是爹娘身旁的乖女儿,难成温顺新娘,
             我不愿,为出嫁装模作样,

             可若是,违背家族礼教, 三从四德,定会使全家心伤。
             那是谁家姑娘, 在凝眸将我望, 为何我的影子是那么陌生,

             无论怎么装扮, 无法将真心藏。
             何时才能见到我, 用真心歌唱, 何时才能见到我, 用真心歌唱。


(木兰难过地坐在花园里,这时父亲悄悄坐到了她的身边,
指着满树的花朵说)

父 亲    :啊你瞧,今年的花儿开得多好啊!可是你看这朵还没开。
              不过我肯定它开了以后,将会是万花丛中最美的一朵。



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【注 釈】

【爽朗】 shuǎng lǎng    (frank   好 hào 说好笑)  朗らか。気さく。
【荣耀】 róng yào 光栄。誉れ。
【胳膊】 gē bo  腕。
【媒婆】 méi pó  仲人。縁談を紹介する人。

【攀上】 pān shàng (=拉关系)
つてを得る。コネをつける。
<用例> 攀上一个高门子。(有力者にとりいる)

【亲事】 qīn shì  縁談。縁結び。

【妇德】 fù dé  婦人が身につけるべき品格。人徳。
旧時、婦人が守るべき四つの徳目 (四德 sìdé ) があった。
四德とは、妇德 fù dé (品格)、妇言 fù yán (言葉づかい)、
妇容 fù róng (身だしなみ)、妇功 fù gōng (家事)をさす。

【辞令】 cí lìng    言葉づかい。
【端庄】 duān zhuāng  (dignified 严格认真)
きちんとして威厳がある。
<用例> 皇上端庄地坐在龙椅上。(皇帝は玉座に端然と座す)

【祠堂】 cí táng  先祖をまつる小さな建物。ほこら。
【保佑】 bǎo yòu  (神仏の)加護がある。
【香案】 xiāng àn  香炉を置く机。祭壇。
【列祖列宗】 liè zǔ liè zōng  代々の祖先。
【一瘸一拐】 yì qué yì guǎi  足をひきずる。(足が不自由なさま)
【光宗耀祖】 guāng zōng yào zǔ  祖先の名を上げる。

【背影】 bèi yǐng   後ろ姿。
【吉祥物】 jí xiáng wù  お守り。マスコット。
【喧闹】 xuān nào  にぎやかな。
【蟋蟀】 xī shuài   〈虫〉コオロギ。
【穿梭来往】 chuān suō lái wǎng  往来の頻繁な。

【还真灵】 hái zhēn líng    なかなか効き目がある。
「还」は、意外を表す副詞。
<用例> 他还真有办法。(あいつなかなかやるなあ)

【乱蓬蓬】 luàn pēng pēng  ぼさぼさの。
【梳妆打扮】 hū zhuāng dǎ bàn  化粧して着飾る。
【盘发】 pán fà  髪をたばねる。
【大家闺秀】 dà jiā guī xiù  名門の令嬢。
【项链】 xiàng liàn    首飾り。ネックレス。〈量〉条、根
【玉珠】 yù zhū    玉石。ひすい。

【光彩夺目】 guāng cǎi duó mù    (gorgeous 耀眼)
目も覚めるばかりの美しさ。
<用例> 一身光彩夺目的服装去参加晚会。
(華麗な衣装で晩餐会に参加する)

【差错】 chā cuò    (mistake   不符合道理或标准)
過ち。まちがい。
<用例> 不出差错地表演。(ノーミスで演技する)

【有损】 yǒu  sǔn     (dishonor   给带来不光彩)
損なう。不名誉を与える。つらよごし。
<用例> 不能有损公序良俗 gōng xù liáng sú。  
(公序良俗を損なってはならない)

【相亲队伍】 xiàng qīn duì wǔ  お見合いの一行。

【谁允许】 shéi yǔn xǔ  (=没有一个人同意)
誰もいいと言ってない。「谁」は、反問を表す疑問代詞。
<用例> 谁允许你进我房间的。(誰が部屋に入っていいと言った?)

【准是】 zhǔn shì  (be sure   一定是)
間違いない。きまってる。「准」は、確信を表す副詞。
<用例> 我想准是个骗局 piàn jú。(てっきり詐欺だと思った)

【谁又惹着她了】 shéi yòu rě zháo tā le
誰が逆らえようか。(= 谁也惹不着她了= 谁都惹不起他了)
「又」は、反問の副詞。
<用例> 又不是小孩子。(子供じゃあるまいし)

【三从四德】 sān cóng sì dé
婦人が従うべき三つの道と守るべき四つの徳目。
「三从」は、家にあっては父に従い、嫁しては夫に従い、夫の死後は子に従うこと。

【温顺】 wēn shùn (modest   温和顺从)
穏やかで従順な。しとやか。つつましい。

【会干活】 huì gàn huó  よく立ち働く。
「会」は、熟練を表す助動詞。
<用例> 她很会过日子。(世帯持ちがよい。暮らしを立てるのがうまい)

【争光】 zhēng guāng  (=win glory 获得光荣)
栄光を勝ち取る。

【公婆】 gōng pó    しゅうと(公公)としゅうとめ(婆婆)

【庄重】 zhuāng zhòng (serious   沉着稳重)
どっしり。冷静沈着。
<用例> 部长庄重地坐在上座。(部長は上座にでんと座る)

【优雅】 yōu yǎ   優雅である。(elegant  高尚美好)
【恭敬】 gōng jìng  礼儀正しくていねい。(respectful to 尊重地对待)
【端茶倒水】 duān chá dǎo shuǐ  両手でささげてお茶を出す。

【笨手笨脚】 bèn shǒu bèn jiǎo
そこつ者。不器用である。動作がもたもたしている。

【急中生智】 jí zhōng shēng zhì  とっさに。急場しのぎに。
<用例> 木兰急中生智, 毅然用炮打了雪山,造成了雪崩,把匈奴们压在了下面。
(ムーランは知恵を巡らし、決然と雪山に向けて大砲を撃ち込み、
雪崩を起こしてフン族たちを埋め尽くしてしまった)

【气急败坏】 qì jí bài huài  (=狼狈不堪;慌张失措)
あわてふためく。前後の見境がつかない。
<用例> 他见别人超过自己, 就气急败坏地大骂起来。
(相手が優勢と見るや、前後の見境もなく怒り出した)

【不管 bù guǎn 你怎么打扮 dǎ bàn 也不可能为你们花家争光 zhēng guāng 】
いくら着飾っても、家の面目は丸つぶれだ。
「不管」は、逆説の接続詞。 「也」は範囲 「怎么打扮」 を示す副詞。
<用例> 不管怎么等也不来。(いくら待っても来ない)

【无心的过失】 wú xīn de guò shī    何気ない過失。
【胭脂】yān zhī  ほお紅。
【倒影】 dào yǐng   逆さまに映った影。

【不是爹娘身旁的乖女儿】
父母に寄り添う素直な娘にあらず。

【乖女儿】 guāi nǚ'ér   素直な娘

【难成温顺新娘】
慎ましく従順な花嫁にも成り難し。

【新娘】 xīn niáng   花嫁

【我不愿,为出嫁装模作样】
嫁ぐため身を繕い取り澄まし生きることなどできようはずもない。

【出嫁】 chū jià   嫁ぐ

【装模作样】 zhuāng mú zuò yàng    (=故意做作,故做姿态)
気取った態度をとる。とりすます。思わせぶり。
<用例> 别装模作样, 快给我看看呀!
(もったいぶらずに早く見せてよ)

【可若是,违背家族礼教, 三从四德,定会使全家心伤】
されど一族の礼儀や道徳に従わねば、皆の心を傷つけてしまうにちがいない。

【违背】 wéi bèi   背く。守らない。

【那是谁家姑娘, 在凝眸将我望, 为何我的影子是那么陌生】
水に映る我が姿、瞳を凝らして眺めれば、正に見も知らぬよそ者の如し。

【凝眸】 níng móu   〈書〉ひとみを凝らす。
【陌生】 mò shēng   見知らぬ人。よそよそしい。

【无论怎么装扮, 无法将真心藏】
いくら身を飾り立てようと、自らの本心を隠すすべもなし。

【无法】 wú fǎ…   する方法がない。
【真心】 zhēn xīn   本心。真心。
【藏】 cáng   隠れる。ひそむ。隠す。

【悄悄】 qiāo qiāo   〔副詞〕 (気づかれないように) こっそり。ひそかに。
<用例> 猫 māo 静悄悄地靠了过来。(ネコがそっと擦り寄ってきた)

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【口語訳】

その昔、名を 「ムーラン」 という朗らかで気立ての良い娘がいました。
彼女は由緒ある 「ファ」 家の一人娘で、両親は彼女が身分の正しい家柄に嫁ぎ、
家に名誉をもたらすことを望んでいました。

ある日の明け方、ムーランは大慌てで腕に何やら書き写しています。
これは今日仲人をする婦人に会うためで、もし彼女が上手に応対ができたならば、
ひとつの良い縁談をもらえるというわけなのです。

木 蘭:    (巻き物を見て、復唱しながら書き写す)
                 婦人の心得は、謙虚でひかえめ、上品に、そして時間を守り … あっ、たいへん!

(ニワトリが鳴くと、ムーランは、ぱっと飛び起きて、急いで父親にお茶を届けにいきます。
彼女の父親は家の祠堂 (ほこら) の中で、祖先がムーランを守ってくださるように祈っています)

父  親:      (香炉を置く机の側でひざまずく) 偉大なるご先祖さま、ムーランが仲人をする婦人に
                 良い印象を与えますように。どうぞムーランに力をお貸しくださいませ。

木 蘭:       お父さま、お茶を届けに来たわ。あららっ!

(ついうっかり、ガチャンと湯飲みを落としてしまう)

父  親:       (びっこを引きながら立ち上がる) ムーラン!

木 蘭:       だいじょうぶよ、予備があるから!
父  親:       ムーラン。

木 蘭:       朝は三杯のお茶を飲みなさいって、お医者さまに言われたでしょ?
父  親:       ムーラン。

木 蘭:       それに夜も三杯よ!
父  親:       ムーラン、もう町に出かける時間だろう? 母さんもわたしも、それを期待しているんだ。

木 蘭:       良い家に嫁いで、ご先祖さまの面目をたもつ、でしょ?
                  お父さま、何も心配はいらないわ。きっと期待にこたえてみせるから。
                  幸運を祈ってて、お父さま。

父  親:       (ムーランの後ろ姿を眺めて) とにかく急ぎなさい。
                  私はもう一度祠堂 (ほこら) に戻って、ご先祖さまにムーランのことをよくお願いしておこう。

(母親とおばあさんは町で、ムーランの来るのを首をながくして待っていました)

仲人甲:      ご夫人、おたくの娘さんはまだ来ないのかい? 
                  うちの仲人さんは気が短いのよ。

母  親:       あの子ったらまた忘れたのね。もっとご先祖さまにお祈りしなくては。

祖  母:       ご先祖さまが何を守ってくださると言うんだい?
                  彼らはもうあの世にいっちまっているんだよ。
                  それよりも、こっちのお守りのほうがずっと役に立つってものだよ。
                  さあて、おまえが役に立つかどうか、これから試してみようじゃないか!

(目を閉じて騒がしい大通りを横切ろうとするおばあさんを見て、
母親はたいそうびっくりしてしまいます)

母  親:       おばあさん、あぶない!

(なんと、おばあさんは一匹の幸運を呼ぶコオロギが本当に効き目が
あるかどうか試そうとしていたのです。
大通りには牛車や馬車、そして手押し車など頻繁に往来していましたが、
おばあさんはなんとか無事に通りのむこう側まで渡ることができました)

祖  母:       やっぱりね! このコオロギは本当に幸運のお守りにちがいないよ!

(この時、ムーランが愛馬カンに乗り、慌ただしく町に駆けつけてきます。
彼女の全身はほこりだらけ、髪の毛はぼうぼうと乱れています)

木 蘭:       お待ちどおさま! あら、どうしたの、お母さま?
                 
母  親:       弁解なんてききたくないわ。さあ、これからすぐに入浴よ。

(母親はため息をついて言います。
彼女は急いでムーランを引っ張って身仕度を整えさせます。

入浴して、着替えて、髪をたばね、化粧して、ムーランは
まるで名門のお嬢さんのように美しいいでたちになりました。

ムーランをじっと見た母親は、たいそう満足げでした。
母親は彼女にくしをひとつ渡します。
そのくしは家に代々ずっと使われてきたものでした)

母  親:       はい!これで準備は整ったわ。

祖  母:       ちょっとお待ち。リンゴを食べて気を落ち着けて、ヒスイの首飾りを
        身に付けて見栄えよく、そして平穏無事であるように。
        それからほら、これを持って行きなさい。縁起のいいコオロギだよ。
                  おまえに幸運と祝福がありますように。

木 蘭:       ご先祖さま、私を守ってくださいな。くれぐれも私がそそうをせず、
                  家の伝統と家風が保たれますように。そしてお父さんの面目が立つように。

(ムーランは仲人の家に到着します。彼女はお見合いをする他の娘たちといっしょに、
仲人をする婦人が自分の名前を呼ぶのをやきもきしながら待っていました。
まもなく一人のでっぷり肥った仲人が家の中から出てきて叫びます)

仲  人:       ファ・ムーラン!
木 蘭:       ここにいまーす!

仲  人:       返事はしなくてよろしい。
木 蘭:       あららっ。

祖  母:       (あの仲人さんは) どうも愛想のない人だね。

(ムーランは仲人につきしたがい家の中に入ります。
仲人はムーランの身なりを細かく点検しはじめます)

仲  人:       痩せ過ぎ。フン、丈夫な男の子は生めそうにないね。
                  じゃあ女性が守るべき四つの心得を暗唱できるかい。早く言ってごらん。

木 蘭:       言葉は控えめに慎ましく、態度は従順であること。
                  身のこなしは上品に、そして家事万端に行き届いていること。
              すべては家の名誉と栄光のため …。

(ムーランは急いで袖をまくり、腕の上の小さい文字を盗み見します)

仲  人:       それではこちらへ。さあ、お茶を入れて。
             嫁ぎ先のご両親に気に入られるには、気品と優雅さ、
                  そして落ち着きをもって立ち居振る舞うこと。
             さらに礼儀をわきまえ、むやみに慌てふためいたりもしない。いいわね?

(続いて仲人は、ムーランのお茶の作法を試そうとします。
この時、なんとお茶を注いだ湯飲みの中にあのコオロギが …)

木 蘭:       あの … ちょっと …。
仲  人:       そして静粛に!

木 蘭:       あの … もう一度入れなおして … みます。
                  
(ムーランはコオロギを救おうとして、うっかり湯飲みをひっくり返してしまう。
はね上がったお湯が仲人にかかり、仲人は思わず飛び上がってしまう)

仲  人:       な、なんて無礼な! … あわわわ! ひえええ!! 

祖  母:       (中はにぎやかで) うまくやっているみたいだね?

(さらにわるいことに、火鉢にぶつかって倒れたはずみに、
火鉢の火が、仲人の着ている服に燃え移ってしまいました)

仲  人:       熱い! 誰か! 水よ、早く水をかけてちょうだい!

(ムーランはとっさに湯飲みを持って仲人の顔にお湯をぶっかけてしまいます。
仲人は立腹のあまり怒鳴り声を上げました)

仲人:         この恥さらし! 花嫁になれたところで、家の恥をさらすに決まってるわ。

(ムーランは愛馬カンに乗って家に戻ります。
自分の何気ない過失が一族に泥を塗ったことを恥じて顔を上げられない思いでいっぱいでした。

ムーランは顔の紅を拭き落とし、髪飾りを解きます。
自分は永遠に名門のお嬢さんになることはできないと思わずため息をつくのでした。
そして傷ついた心の内を歌いあげます)

(歌唱 Reflection)

だめね
何のために
生まれて来たの私

役に立たない娘
分かる
ありのままの自分を
ごまかせないの

水に映る派手な姿
知らない人に見えるわ
隠せない自分らしさ

本当の私
いつの日か必ず映る
いつの日か


(傷ついたムーランは花園の中に座っています。
そのとき、そっと近づいてきた父親がムーランのそばに座り、
満開の花を指さして言います)

父  親:       今年も見事に咲いたものだ。でも、ひとつだけ蕾のままだ。
        … 最後に開いた花は、いちばん美しい花になると言うぞ。