配役 | 曾宮周吉 | 笠智衆 | 服部昌一 | 宇佐美淳 | 小野寺譲 | 三島雅夫 | |||||||||||
娘・紀子 | 原節子 | 田口マサ | 杉村春子 | 妻・きく | 坪内美子 | ||||||||||||
北川アヤ | 月丘夢路 | 三輪秋子 | 三宅邦子 | 娘・美佐子 | 桂木洋子 |
小津安二郎と原節子
「晩春」は、年頃の娘を嫁にやるため、父親が気をつかうという物語である。
父親を演じたのは笠智衆であり、それはまさしく小津安二郎の分身そのものであった。
この時期、小津安二郎は原節子と結婚するのではないかという噂が流れたことがある。
その真偽のほどは分からないが、小津が生まれてはじめて、原節子の中に限りなく美しい
女性を見出し、それをフィルムの上に焼き付けることに懸命であったことだけは事実である。
父と娘が慈しみ合うように暮らすことが、生涯独身であった小津には理想の夢だったのかも知れない。
だが、それは現実にはあり得ない夢だと知り、彼は自分の守備範囲をよく自覚している人であった。
「晩春」以降、「麦秋」「東京物語」で小津作品を支えた続けた原節子は、1963年小津が没すると、
その死に殉ずるかのように、あらゆる公的な場から身を退いてしまった。