日本橋 1929年(昭和4年) 邦画名作選 |
明治末期。帝大医学部を卒業した晋三(岡田時彦)は、巡礼に出た姉に似た
日本橋の芸者・清葉(酒井米子)に惹かれる。
しかし、旦那のいる清葉は、色々な義理があるため晋三の恋を退ける。
振られた晋三は、清葉と張り合うお孝(梅村蓉子)といい仲になる。
だが清葉に振られたため、お孝と出来た客も多く、伝吾(高木永二)も
その一人だった。
伝吾のお孝への愛執の深さを知った晋三は、世を捨てた巡礼者となり、
姉を探す旅に出る決心をする。
1914年(大正3年)千章館から出版された泉鏡花の同名小説の映画化。
明治末期。日本橋で芸妓として働く清葉(酒井米子)とお孝(梅村蓉子)。
そこに青年・晋三(岡田時彦)の清葉への恋慕とお孝の対抗心が浮き上がる。
それぞれが背景に持つ複雑な過去や関係性、その上での物語が綴られる。
気っぷの良い芸妓を演じた二人(酒井・梅村)の粋でさりげない仕草や、
艶の競いようもまた見事で印象に残るものであった。
一方、主人公の晋三(岡田)は、姉が金持ちの妾をして稼いだ金で大学を卒業した。
その姉は弟を一人前にすると、尼巡礼になって行方知れずになっている。
晋三は、この姉が恋しいと言い続け、自分に縋って来る芸者たちを振り捨て、
自らの出世までも捨てて、姉を訪ねて、あてどのない旅に出ることになる。
こうした女が男のため、自ら犠牲となるような語り口は、以後「滝の白糸 1933」
「折鶴お千 1935」「残菊物語 1939」等の作品へと引き継がれている。
製作 日活
監督 溝口健二 原作 泉鏡花
配役 | 葛木晋三 | 岡田時彦 | 五十嵐伝吾 | 高木永二 | |||||||||
滝の家清葉/晋三の姉 | 酒井米子 | 笠原信八郎 | 一木札二 | ||||||||||
稲葉屋お孝 | 梅村蓉子 | ||||||||||||
半玉お千世 | 夏川静江 |