任侠中仙道 1960年(昭和35年) 邦画名作選
身延山参詣の途中、もめごとの仲裁に入った清水の次郎長は百姓一揆の後押しをしたと疑われる。
一家は嫌疑が晴れるまで清水には戻らず、信州へ向かう。
一方、国定忠治の一行が、関所を破って信州に向ったという知らせが伝わる。
比佐芳武脚本、松田定次監督、片岡千恵蔵主演の「清水次郎長」シリーズ第三作。
片岡千恵蔵の次郎長と、市川右太衛門の国定忠治が信州路でめぐり逢い、悪党の計略に引っかかって
一度は対決するものの、最後には協力しあい、農民を苦しめる悪代官らを懲らしめる痛快娯楽時代劇。
清水次郎長と国定忠治が、お互いに面識があったという史実はない。
だが江戸末期の同時代に生きた二人は、いずれも弱きを助け、強きを挫く侠客であり、観客たちは
映画の中で活躍する二人を見て、素晴らしい男と男の交流があったと信じたくなってしまうのである。
本作は、初春を飾るオールスター超大作であるが、千恵蔵と右太衛門の両御大がまったく互角の
主演であり、活躍の度合いもほとんど同じであることが特徴となっている。
連れて歩く子分の面々も、ほぼ互角であり、ラストの迫力ある大立ち回りも一緒に演じている。
時代劇のスター俳優というものはプライドがやたらと高い。そんな彼らを巧みに捌きつつ、
両御大にきちんと等分の見せ場を設けるという、松田定次監督の手腕が冴える一篇である。
製作 東映
監督 松田定次