お嬢さん   1930年(昭和5年)     邦画名作選
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岡本君(岡田時彦)と斎藤君(斎藤達雄)は、時代の先端をゆく新聞記者になった。

記者生活の第一歩を踏み出した二人は、まず先端的特ダネを取る事を命じられる。

「新聞記者に躊躇は禁物だ!」と部長に一喝され、早々にして社外に飛び出した。


ふと映画俳優学校という看板を発見。これぞ時代の最先端と、早速校内に入ってみる。

すると、二人が見たものは、ラブシーンの実習と称して女生徒にじゃれつく教師たち、
ふっと落ちた書き割りの向こうで、花札に夢中になっている校長たち。

だが、その中に一人だけ、燦然と輝くばかりの美しい女性がいた。
これぞ「ハキダメに鶴」と、二人は張り切って取材に努めた。


その夜二人は、下宿の娘・キヌ子(田中絹代)の心づくしの就職祝いの宴を早々に
済まし、徹夜で原稿を書いた。

翌朝、意気揚々と出社すると、なんとその原稿はいきなり没にされた。
ライバル紙の「東都新聞」に同じ探訪記事が出ていたからだ。

それもそのはず、昨日見た「ハキダメに鶴」こそ「お嬢さん」とあだ名される
東都新聞の敏腕記者だったのだ。




1923年(大正12年)松竹に入社した小津安二郎は、日本映画をたった三本しか見ていなかったという。

チャップリンやキートンに代表されるアメリカ喜劇こそ、彼にとっての映画の理想だったのだ。

このことが、後に監督に昇進(1927年)した彼の映画作りに、大きな影響を与えることになった。


松竹では、助監督が監督に昇進した際、短編の喜劇を一種の訓練として撮らせた。

これは、劇場で公開される作品に添えられて上演されるものであった。

小津もこれに従い、多くの喜劇映画を撮ったが、残念ながら、それらのフィルムの殆どが失われている。


本作「お嬢さん」は、そんな小津の初期喜劇の総集篇ともいえる作品であり、彼がかつてアメリカ喜劇
から学んだ軽妙なナンセンスの味がたっぷりと含まれた都会的コメディである。

栗島すみ子、岡田時彦、斎藤達雄、田中絹代など、当時の松竹オールスターの出演も相まって、
本作は、キネマ旬報のベストテン三位に選ばれ、興行的にも大成功を収めた。


 
 
 製作   松竹

  監督   小津安二郎

  配役    お嬢さん 栗島すみ子 社会部長 岡田宗太郎
      岡本時雄 岡田時彦 古参記者 大国一郎
      斎藤達次 斎藤達雄 俳優学校の校長 山本冬郷
      キヌ子 田中絹代 教師 小倉繁

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