女たちの忠臣蔵 1979年(昭和54年) ドラマ傑作選
元禄十四年春、江戸城は松の廊下。
赤穂城主・浅野内匠頭は、吉良上野介からの度重なる侮辱に耐えかね、刃傷に及ぶ。
浅野は即刻切腹、お家は断絶。だが、吉良上野介はお咎めなしという処分であった。
その悲報は、まもなく赤穂の国本家老・大石内蔵助(宇津井健)にもたらされる。
大石は、赤穂の城を明け渡す決意をするとともに、家臣らと密かに仇討ちを誓う。
やがて、江戸に集結した浪士達は、主君の仇討ちのため、吉良家討入りの準備を進める。
女達は、彼らの本願成就を祈りながらも、愛する者を失う悲しみにじっと耐えていた。
大義の名の下に苦しむのは、いつの世も女ばかり。死ぬよりも、生き存えることの方が辛い。
そんな運命を告げる一夜が、まさに始まろうとしていた。
橋田寿賀子のオリジナル脚本で、女の立場から描いた忠臣蔵ドラマとして注目された。
本作は、大石内蔵助に率いられる赤穂浪士ではなく、その妻や姉妹、恋人らの苦悩を
描いた物語である。
四十七士のひとり、大石瀬左衛門(渡辺篤史)の姉・つね(香川京子)は目が見えず、
内蔵助は、瀬左衛門を討ち入りからはずそうとする。
しかしつねは、見えぬ目で弟のための白装束を縫って「私は独りでも生きていける」
と送り出す。
また、飲み屋の女・そめ(小川知子)は、毛利小平太(新克利)の子を身籠っていて
「そんな勝手な殿様のために、命を粗末にせず、生きてください」と泣き叫ぶ。
この「残される女」の覚悟や狂乱は、たとえ生き恥を曝しても生きていてほしいという
女達の本音を赤裸々に表現している。
大石内蔵助の妻・りく(池内淳子)をはじめとして、女達の悲愴なドラマが幾重にも
綴られた本作は、42.6%という驚異的な視聴率を記録した。
(制作)TBS(脚本)橋田寿賀子
(配役)大石内蔵助(宇津井健)りく(池内淳子)大石主税(金田賢一)瑤泉院(佐久間良子)こと(奈良岡朋子)
堀部弥兵衛(志村喬)お幸(和泉雅子)堀部安兵衛(沢竜二)小野寺十内(山村聡)丹(杉村春子)寺坂吉右衛門(岡本信人)
しの(竹下景子)間新六郎(篠田三郎)みち(中田喜子)大石瀬左衛門(渡辺篤史)つね(香川京子)毛利小平太(新克利)
そめ(小川知子)小夜(山岡久乃)おりん(山田五十鈴)深雪太夫(大原麗子)おけい(浜木綿子)長吉(渥美清)