天下の御意見番 1961年(昭和36年) 邦画名作選
三代将軍・徳川家光の時代。
正月の二日は、大名と旗本が年始の挨拶に登城する日である。
もともと大名と旗本は、犬猿の仲であっただけに「天下の一大事」が発生する。
城の入り口で、それぞれの行列が先を争って大喧嘩を始めてしまったのだ。
ところが、幕府の裁定で、旗本側だけが切腹という片手落ちの断が下される。
事情を聞いた大久保彦左衛門は、なんとかまるく治めようとするのだが…。
小国英雄脚本、松田定次監督、月形龍之介主演による「一心太助」シリーズ番外編。
家康より「天下の御意見番」を託された彦左衛門は、一方的な幕府の裁定について
家光を諫めようと江戸城へ向かう。
しかし、大名びいきの老中たちの策略によって、家光との会見は阻まれてしまった。
屋敷に戻った彦左衛門に、なんと米問屋の娘お遊が押しかけ女房としてやってくる。
米問屋の灘波屋は大阪の陣で家康に援助した恩人だから、追い帰すこともできない。
本作で、大きな役を果たしているのは、丘さとみが演じる米問屋の娘お遊である。
彦左衛門に嫁入りしたいと、とつぜん大久保家へ乱入し、珍騒動を起こすことから、
映画の内容は、ここから喜劇調になってしまっている。
だが彼女は、旗本が駕籠に乗って登城することを禁じられたため、たらいに乗って
登城することを提案したり、さまざまな場面で重要な役割を果たすことになる。
1955年(昭和30年)にデビューした丘さとみは、東映生え抜きの若手女優である。
お姫様から、田舎娘まで演じる役柄も幅広く、美空ひばりとの共演も多かったが
大スターのひばりを向こうに回しても、貫禄負けすることはなかった。
彼女は、月形龍之介主演の「水戸黄門 天下の副将軍」にも出演しているが、
いずれも主役を手玉に取るような痛快なお喋り娘を演じていたのが印象深い。
製作 東映
監督 松田定次