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「ローマの休日」です。いにしえの歴史の街ローマが舞台。
オードリー・ヘップバーン演じるお茶目な王女と新聞記者のたった一日の恋物語。

1953年8月アメリカで初演。翌年2月香港で公開。
半世紀以上たった今でも色褪せることのない不朽の名作です。

さて、主人公の某国王室のアン王女は、親善旅行でローマを訪れています。

でも彼女は、あまりの忙しい日程に、精神を乱して、ヒステリックに…。
侍医に鎮静剤を打たれますが、かえって目が冴えて眠れなくなってしまう。

ふと思いついた彼女は、滞在先の大使館をひそかに脱出してしまいます。
街を歩いているうちに鎮静剤がきいてきて公園のベンチで寝こんでしまった。

そこを偶然通りかかったのが、アメリカ人の新聞記者ジョー・
ブラッドレー。

若い娘がベンチに寝ているのを見て、何とか家に帰そうとする。
しかし彼女の意識は朦朧としていて埒があかない。

仕方なく彼女を自分のアパートへ連れて帰り、一晩の宿を提供することに。


(1) (2) (3) (4) (5)

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【第二課 第一節】

现在直播一段新闻快报:欧洲最古老的王室王位继承人安公主,对欧洲几大城市进行友好访问。
安公主此刻正在拜访伦敦,在首都她受到当地市民和政府的热烈欢迎。

在接下来的三天行程里,她参观了白金汉宫,接下来便飞往阿姆斯特丹。
她参加了国际大厦竣工仪式以及国际游轮下水典礼。

接着她又来到了巴黎,她参加了与官方研讨会加强其与西欧各政府的贸易关系。
在访问了伦敦,阿姆斯特丹,巴黎三大城市后,安公主最后抵达了古老永恒的城市“罗马”

观看罗马精彩的阅兵仪式时,公主笑容可掬。
虽然连续不断地公开露面,她也面无倦容,是夜,在其驻地大使馆举办接待公主的正式舞会。

舞会上,等待公主接见的贵族们排起了长长的队伍。
由于长时间穿着高跟鞋站立,公主只能一面微笑示意,一面偷偷把鞋子脱掉放松一下。

终于,接见仪式结束,安公主可以坐下了。
但是因为刚才的小动作,一不小心公主的一只鞋掉了出来。

一旁的侍从看到,不禁倒吸了一口气。
还好一旁的大使点点头站起来,他借邀请公主跳舞之名,起身扶起公主,公主神不知鬼不觉得将鞋子穿好了。

在一旁提心吊胆地看着的侍从们这才松一口气。
舞会上,公主不得不例行公事和一位来访宾客跳舞,有的年迈唠叨,有的木讷无趣。
总之这对公主来讲真是身心疲惫。


结束了一天的工作,公主在上床休息,而伯爵夫人毫不体谅地向她汇报明天的密密麻麻的工作议程。
八点半和大使馆人员共进早餐,九点出发参观汽车制造厂,十点三十五分…

公主靠在床上,默默地听着,终于,忍不住大叫道。
“不必了,别说了!”

伯爵夫人忙在一旁安抚她,但是公主情绪十分激动,委屈地趴在床上大哭了。伯爵夫人请来医生。
医生为公主注射了镇静剂,告诉她这样她就会好好地睡上一觉。之后,医生、夫人便离开了。

房间里只剩下公主一个人,她走到窗边,看着楼下欢快的年轻人舞会,
看着远处灯火通明的罗马城,突然,她决定一定要到那里去看一看。

公主换上便装,先是打开卧室门看了看,房间外面有人看守,于是她便从阳台跳到了庭园里,偷偷留了出去。
藏身于运送食品的小货车内的公主看到自己终于逃出了那个寓所,兴奋极了。

她好奇地四处张望,一切都是那么新鲜。
小货车来到了罗马城区,她趁着停车的空隙,跳下了车。

然而没逛多久,医生给她注射的镇静剂就发生了效力,她在公园的一条长凳上睡着了。



(美国报社记者, 乔·白莱德把双手插入衣袋里沿着马路走过来。
当走到一个公园的长凳旁时,他放慢脚步。

他看到长凳上躺着一个年轻女孩,迷迷糊糊地说着梦话。走过她身边的时候,他好奇地看了她一眼)


安    : (恍恍惚惚地) 好快乐, 今晚好吗?

(她一翻身差点摔了下来, 乔慌忙扶她睡好, 并轻拍她的脸, 叫醒她)

乔    : 嗨, 嗨, 醒醒…。

安    : 诚心的谢谢你, 谢谢…幸会。
乔    : 我也幸会。
安    : 赐你坐下。

乔    : 我想你最好坐起来, 象你这么年轻躺在这儿, 会被警察取缔的。

安    : 警察?
乔    : 是的。

安    : 两点十五分回来换装。两点四十五分…。
乔    : 你知道有些人是不太能喝酒的。你就不应该喝酒, 对吗?

安    : 「我发誓我喜欢听你的话, 那悦人的声音, 哪怕是我的心被尘土掩灭, 我也会满怀喜悦」
            你知道这首诗吗?

乔    : 知道, 你博学多才, 穿着高尚。却在街市上流连。能不能解释一下?

安    : 这世界需要什么呢? 是不是又恢复到甜美和高尚了。是吗?

(她的头靠在乔的肩膀上又睡过去了。乔把她的头挪开)

乔    : 是的, 我相当的同意。(招手叫计程车) 你先去喝杯咖啡, 就会没事了。

(当乔走向计程车时, 回头一看, 安又躺下睡过去了。乔没办法走回她身边)

乔    : 我说你起来上车。来吧, 上车回家, 听话。

安    : 快乐。
乔    : 你有钱吗?

安    : 从不带钱。
乔    : 这是坏习惯。好, 我送你回家, 来吧。

安    : 这是计程车?
乔    : 对, 你说对了。

司  机: 上哪儿? 你上哪儿呀?

乔    : 你住在哪儿?
安    : 竞技场。

(她昏昏欲睡之际,吐出三个字: 「竞技场」)

乔    : 得了, 你没那么醉的。
安    : 你很聪明,我只是快乐。很快乐。
乔    : 好了, 不要再睡了。

司  机: 好了, 先生。我们到底去哪里? 总不能在这里磨蹭吧。

乔    : 等一等, 你没看见她的样吗? 好吧。
           你要上哪儿?  我应该送你去哪儿?
           你住在哪儿? …听我说。你住在哪儿?

(乔咄咄逼人)

安    : 竞技场。
乔    : 醒醒…。

安    : 竞技场…是的。

(乔没办法, 对司机说)

乔    : 她说她住罗马竞技场。

司  机: 这实在是太糟了! 先生。我工作的这么晚。老婆和三个孩子。
            三个小孩子, 你知道吗?  他们是小孩, 他们会 ··。
            现在我的车要回家了。我也得回家了,你知道吗?  我的孩子他们会哭的。
            先生走吧, 行吗?

乔    : (无可奈何)  好吧, 到马格大街51号。
司  机: 马格大街51号?  好的, 马上就到。

(他们到达乔的住所)

司  机: 好了,这就是马格大街51号。现在我要下班了, 我真愉快。一千里拉, 先生。
乔    : 好的。请找钱。

司  机: 一、二、三、四,四千里拉。谢谢您了。
乔    : 好。这一千里拉是小费。

司  机: 给我?

乔    : 是。
司  机: 谢谢你先生。

乔    : 听着, 是这样的。她想到哪儿。就带她到哪儿, 知道吗? 知道吗?  
          知道了?  好的, 就这样。

司  机: 不…等等! 这不行! 绝对不 ··。

乔    : 好了…等她醒了以后, 就带她到她想去的地方。

司  机: 听着…先生。在我的车上是不能睡觉的。
           我的车上不能睡觉。因为那是违法的, 知道吗?

乔    : 是这样的, 老兄。这本来是不是我的难题。知道吗? 我从来没有见过她。明白了。

司  机: 这是你的难题, 不是我的。绝对不是, 谁要她呢? 你也不要, 我也不要。
           对了,我是根本不要的。有了, 交给警察吧, 怎么样?

乔    : 也许她需要这样。别慌了。

(乔只好无可奈何地把她带回了自己的公寓)

安    : 好快乐, 好快乐。
乔    : 好了进来吧。

安    : 这是不是电梯呀?
乔    : 是我的房间。

安    : 很抱歉, 我是想说。我的高尚的仪态。是不是越来越糟了? 我可以睡这吗?
乔    : 这还用说吗?

安    : 我可不可以穿件丝质的睡衣。睡衣上有印花的饰物。
乔    : 我看今晚你得将就一下了。在这儿。

(乔从壁橱里拿出一套睡衣)

安    : 是普通睡衣吗?
乔    : 抱歉, 宝贝。我穿这睡衣一年了。

安    : 麻烦请帮我脱衣服。
乔    : 好呀,好的。 (把她脖子上的围巾解开)  好了, 其它的你可以自己来了。

(乔开了一瓶威士忌, 给自己倒了一杯)

安    : 我也可以喝一点吗?
乔    : 不行! 好…。

安    : 这实在是很奇怪。我从没有单独和一个男人在一起, 就算是穿着衣服也没有,
            而不穿衣服那是更加稀奇的事。但是, 我似乎也不太介意。你介意吗?

乔    : 我想我得到外面去喝杯咖啡了。你最好快去睡觉。不! 不是这儿, 是那儿。

(她晕头转向地朝床边走去,乔一把拉住她推到躺椅边)

安    : 你真挑剔。

乔    : 好了, 睡衣在这儿, 快去睡觉。穿上它, 知道了吗? 穿上它。
安    : 谢谢。

乔    : 你得睡躺椅, 不能睡床上。睡在椅子上,睡这懂吗?
安    : 你知道我最喜欢的一首诗吗?

乔    : 你已经告诉过我了。

安    : 「我会拒绝尊贵在优雅的躺椅中, 在灵魂绝妙的山里」 济慈的诗。
乔    : (不是济慈) 是雪莱的。

安    : 济慈!
乔    : 你继续把心思放在诗上。并且穿上睡衣一切就会结束。

安    : 是济慈。
乔    : 不, 雪莱。我会在十分钟后回来。

安    : 济慈!。你可以得到我的允许, 退下。
乔    : 非常感谢。

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【注 釈】

【安公主】 ān gōng zhǔ  アン王女。(Princess Ann)ヨーロッパ某国の王女。
【白金汉宫】bái jīn hàn gōng   バッキンガム宮殿(Buckingham Palace)ロンドンにある歴代王室の住居。

【阿姆斯特丹】ā mǔ sī tè dān アムステルダム(Amsterdam)オランダの首都。ヨーロッパ有数の貿易港。
【大使馆】dà shǐ guǎn  大使館。ローマに駐在する某国大使の公館。(Embassy)

【侍从】shì cóng  侍従。王室の御付きの者。(Chamberlain)
【大使】dà shǐ  ローマに駐在する某国の大使。(Ambassador)

【神不知鬼不觉】shén bù zhī guǐ bù jué(=没有被人发觉)  誰にも気づかれずに。
<用例>  神不知鬼不觉地深入敌人阵地。(気づかれずに敵の陣地に深く入り込む)

【伯爵夫人】bó jué fū rén  伯爵夫人。王室の身の回りの世話をする女官。(Countess)

【密密麻麻】 mì mì má má   (=又多又密)余裕がなくぎっしり詰まった。(hard schedule)
<用例> 狭窄的道路两旁,房屋密密麻麻地排列着。
(狭い道の両側には家屋が隙間なくみっしりと立ち並んでいた)
<用例> 纸上写着密密麻麻的的小字。
(紙には小さな文字がびっしりと書き込まれていた)

【长凳】 cháng dèng  ベンチ。(park bench)

【乔•白莱德】 qiáo bái lái dé  ジョー・ブラッドレー。(Joe Bradley)
アメリカン・ニュース・サービス社ローマ支局の記者。

【放慢脚步】 fàng màn jiǎo bù    歩をゆるめる。

【迷迷糊糊】 mí mi hū hū(=模糊不清, 恍恍惚惚)(doze)
うとうと。ぼんやり。もやもや。とろんと。
<用例> 刚闭上眼睛就迷迷糊糊地睡着了。
(目を閉じるや、うとうと眠りこんでしまった)

【梦话】 mèng huà  寝言。(talk in her sleep)
【恍恍惚惚】 huǎng huang hū hū  うつらうつら。うっとり。

【好快乐】 hǎo kuàilè     (so happy)
最高の気分である。満ち足りている。
「好」は程度副詞。「快乐」は形容詞。
<用例> 过好快乐的单身生活。(ごきげんな単身生活を送る)

【赐你坐下】 cì nǐ zuò xià (=你可以坐下了)
赐 (=给予 jǐ yǔ) 賜る。与える。
どうぞお座りになって。(you may sit down)

【哪怕】 nǎpà   〔接続詞〕 たとえ … でも
【掩灭】 yǎn miè     覆われる。埋没する。
【满怀喜悦】 mǎn huái  xǐ yuè     喜びでいっぱいである。

【流连】 liú lián    気ままに遊楽にふける。
<用例> 在酒馆里流连不归 guī。(酒場に入り浸る)

【能不能解释一下】 néng bù néng jiě shì yí xià
少し説明してもらえまいか。
(Would you care to make a statement?)

【是不是又恢复 huī fù 到】   ふたたび回復するのではなくて?
「又」は、再現を表す副詞。
<用例>  春天又到了。(ふたたび春が来た)

【从不】 cóng bù  これまで … ない。
<用例> 从不迟到。(一度も遅刻したことはない)

【竞技场】 jìng jì chǎng    コロセウム(Colosseum) 古代ローマ時代の円形闘技場。

【昏昏欲睡之际】 hūn hūn yù shuì zhī jì  うとうと眠りこむ間際に。

【好了,不要再睡了】 もういい、二度と寝たりするな。(now, don't fall asleep again)
「好了」 は制止を表す形容詞。「再」 は継続 (未来) を表す副詞。
<用例> 好了, 不要再提了。(もういい、二度と口に出すな)

【磨蹭】 mó cèng    ぐずぐずする。のろのろする。(slowly)

【总不能在这里磨蹭 mó cèng 吧】   時間つぶしはもうたくさんだ。
「总」 は継続を示す時間副詞。「不能」 は不同意を示す助動詞。
<用例>  你总不能一边走, 一边吃东西吧?
(歩きながら食べるのはもうやめたらどうだ?)

【咄咄逼人】 duō duō bī rén (=气势汹汹,给人压力)
すごい剣幕で。居丈高に詰め寄る。

【公寓】 gōng yù   アパート。(apartment)
【仪态】 yí tài  容貌。風采。(looks)

【这还用说吗? 】   言わずもがなだ。もちろん。言うまでもない。(That's the general idea)
「还」は反問の副詞。
<用例> 这么晚,你还能来吗? (こんな遅くに来られる訳がない)

【将就】 jiāng jiù がまんをする。間にあわせる。
【壁橱】 bì chú  クローゼット。押し入れ。(closet)

【自己来】 zìjǐ lái   自分でやる。(you can handle the rest)
<用例> 让 ràng 我自己来。(自分でやらせてください)

【威士忌】 wēi shì jì  ウイスキー。(whisky)
【就算】 jiù suàn 〔接続詞〕 たとえ。かりに。よしんば。

【似乎也】 sì hū yě   どうも…のような気がする。
<用例> 在我的记忆中,似乎也看过类似的片子。 
(同じような映画を見たような記憶がある)

【我似乎也不太介意。你介意吗?】
wǒ sì hū yě bú tài jiè yì。nǐ jiè yì ma
それほど気にならないわ。あなたも?
(I don't seem to mind. Do you?)

【晕头转向】 yūn tóu zhuàn xiàng (=头脑发晕,辨不清方向)
寝ぼけて方向を見失う。頭が混乱する。
<用例> 工作太多, 把我搞得晕头转向。
(仕事が多すぎて頭がくらくらしてきた)

【挑剔】 tiāo ti    けちをつける。あらを捜す。(find fault with)

【济慈】 jì cí (John Keats,1795年-1821年) 英国ロマン派詩人。
【雪莱】 xuě lái (Percy Bysshe Shelley, 1792年-1822年)  英国ロマン派詩人。


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【口語訳】

アン王女に関するニュースです。
ヨーロッパ最古の王室の王位継承者、アン王女は、欧州親善旅行の最初の地、
ロンドンで大勢の市民から歓迎を受けました。

バッキンガム宮殿を見学するなど、三日間を精力的に過ごされた王女は、
次にアムステルダムでビルの寄贈式と船の進水式に列席。

次の訪問地パリでは、貿易に関するシンポジウムに出席されました。

ロンドン、アムステルダム、パリに続いて、アン王女は最後の訪問地、永遠の都、ローマに到着しました。
華やかな軍隊のパレードに迎えられた王女は、終始微笑みを絶やさず観閲されました。

強行軍にもかかわらず王女はいたってご健勝で、夜は駐在大使主催の歓迎舞踏会に出席されるご予定です。



舞踏会では、王女との接見を待つ来賓の貴族たちが、長い行列を作っている。

ハイヒールで立ち続け、疲労困憊の王女は、満面の笑みを浮かべながらも、
ドレスの下ではこっそりと片方の靴を脱いでリラックスする。

ようやく接見式が終了し、王女は椅子に座ることができた。
だが、さきほど脱いだ靴を履こうとするも、靴がコロッと倒れてドレスの外に出てしまっている。

ころがっている靴に気付いた一人の侍従が、思わず顔をしかめる。
すると大使がうなづいて立ち上がり、王女にダンスを申し込む。

大使が手を差し出し、王女を支えたため、彼女は誰にも気づかれずに靴を履くことができた。
はらはら見守っていた侍従たちは、ほっと一息ついた。

舞踏会が始まり、王女が来賓たちとダンスを踊る。かなり年配のよく喋る来賓、朴訥で無口な来賓など、
儀礼的にダンスをこなしながら、王女は心の中で大きなため息をつくのだった。



ようやく一日の公務を終えて、ベッドで休んでいると、
伯爵夫人が、翌日のぎっしり詰まったスケジュールを王女に伝える。

「八時半に大使館員と朝食、九時に自動車工場の視察、十時三十五分…」

王女はベッドに寄りかかり、黙々と聞いていたが、ついに、こらえきれずに叫ぶ。
「もういいわ、やめてちょうだい!」

伯爵夫人は慌てて王女を慰め、落ち着かせようとした。
だが王女の興奮は治まらず、ベッドに突っ伏してわんわん泣き出した。

伯爵夫人は御付きの医者を呼んだ。
医者は王女に鎮静剤を注射して、これで楽に眠れると彼女に告げると、伯爵夫人と共に部屋を出て行った。


部屋にひとり残された王女は、窓際まで歩み寄った。階下では若者たちのダンスパーティーが賑やかに催されている。
遠くに見えるローマ市街の灯りは、王女に手招きしているようだ。王女はどうしても外の世界が見たくてたまらなくなった。


王女は普段着に着替え、寝室の扉をそっと開けて見た。部屋の外は侍従が監視している。
彼女はバルコニーから庭園に飛び降り、そのままこっそり大使館を抜け出した。

止まっていた貨物車の荷台に隠れるように乗り込む。
これでようやく大使館を脱出できた。王女の頬は上気し、自然に笑みが溢れた。

王女は興味深げに街の光景を見回す。何もかもが新鮮に感じられた。
ローマ市街まで貨物車がやって来ると、彼女は停車した隙に荷台から飛び降りた。

だが街の中をぶらぶら歩く間もなく、鎮静剤が効いてきて、彼女は公園のベンチの上で、うとうとと眠りこけてしまった。



(アメリカの新聞記者、ジョー・ブラッドレーは両手をポケットに入れ通りに沿って歩いてくる。
とある公園のベンチのそばにやって来ると、彼は歩をゆるめた。

見るとベンチの上には一人の若い女の子が横たわり、しきりに寝言を言っている。
彼女の前を通り過ぎるとき、ジョーは好奇心に駆られて彼女をちらっと見た)


ア ン:  (うつらうつらと) … 光栄ですわ … ご機嫌いかが?

(彼女は寝返りを打って石畳に落ちそうになる。

ジョーはあわてて彼女を支え、ベンチの上にきちんと乗せてやった。
そして彼女の顔を軽くたたいて目覚めさせようとする)

ジョー:  おいおい、ちょっと君、起きなさい。

ア ン:  … 感謝します。お会いできて光栄です。
ジョー:  こちらこそ。

ア ン:  … お掛けになって。
ジョー:  君はすぐ起きたほうがいい、でないと警察にしょっぴかれるぞ。

ア ン:  警察?
ジョー:  そう、警察だ。

ア ン:  二時十五分、帰って着替える。二時四十五分 …。
ジョー:  いいか、酒に弱いなら飲んではいけない。

ア ン:  「我誓う、死して葬られようとも汝の声を聴かん、我が心其処にありて尚、喜びに満ち溢れ …」  
                この詩ご存知?

ジョー:  まあね、しかし教養があって身なりもいい、それがこうして野宿とは。何か訳がおありかな?

ア ン:  この世界が望んでいるものは、人の心に優しさと品格を取り戻すことではなくて?

(彼女はジョーの肩にもたれ、またもや眠ってしまった。ジョーは彼女の頭をのけようとする)

ジョー:  ま、君のご意見ももっともだね。 (手を振ってタクシーを呼ぶ)  コーヒーでも飲めば目が覚めるよ。

(ジョーがタクシーに歩きかけて振り向くと、彼女はまた横になって眠っている。
ジョーはやれやれと戻ってくる)

ジョー:  君、タクシーに乗りなさい。さあ、車で家に帰るんだ。

ア ン:  … 感謝します。

ジョー:  金はあるか?
ア ン:  持ったことがないわ。

ジョー:  それは悪い癖だな。しかたない、送っていくよ、さあ。

ア ン:  タクシーだわ!?
ジョー:  そう、君の言う通りだ。

運転手:  お客さん、行先は?

ジョー:  君、行先は?住所はどこ?
ア ン:  … コロセウム。

(彼女はうとうとと 「コロセウム」 とつぶやいた)

ジョー:  酔ったふりはもうよせ。

ア ン:  あなたって鋭いのね。でも私はとっても幸せな気分なだけ …。
ジョー:  おいおい、また寝るんじゃない、おきろ!

運転手:  旦那、いつまでももめてないで、行き先を決めてもらえませんかね。

ジョー:  ちょっと待ってくれ、君は彼女の状況がわからんのか。今聴くから。

運転手:  はいはい。

ジョー:  家はどこなんだ、どこに住んでる?おい、君の住所だよ。しっかりしてくれ、家の住所は?

(ジョーはすごい剣幕で尋ね続ける)。

ア ン:  … コロセウム。
ジョー:  目を覚ましなさい。

ア ン:  … コロセウム … よ。

(ジョーはため息まじりに運転手に伝える)

ジョー:  コロセウムに行ってくれ。

運転手:  そりゃ間違いだ。なあ旦那、もうこんな時間だ。家はかあちゃんと三人の子供が俺を待っててね。

               子供が三人だよ、分かるかい? 車も戻す時間だし、俺だって帰らなきゃならない、分かるだろ?
               子供たちはビービー泣きやがるんだ。とっとと行く先を決めて家に帰らせてくれよ。

ジョー:  (せんかたなく) わかった、マルグッタ通り51へやってくれ。

運転手:  マルグッタ通り51?よしきた行くぜ!

(タクシーはマルグッタ通りで停まった)

運転手:  マルグッタ通り51。到着しました。これでやっと終業だ、うれしいねえ。
               旦那、1千リラになります。

ジョー:  わかった。これでおつりを。

運転手:  おつりが4千リラ。
ジョー:  これを … 1千リラ、チップだ。

運転手:  こんなに!? ありがとう。

ジョー:  そのかわり、その金でこの子を家まで送ってくれ。
               いいか、わかるな? 頼むぞ。じゃあ、そういうことで。

運転手:  いや … ち、ちょっと、旦那、待ってくれ。困るよ。絶対だめ …。

ジョー:  いいか? 目が覚めたら彼女が行きたい場所へ連れて行ってやればいい。

運転手:  いいや、待ってくれ。俺のタクシーはホテルじゃないんだ。寝られちゃ困る。
               なぜかって? そりゃ法律違反だからだ。言ってること分かるだろ?

ジョー:  まあ、そう言うな。俺だっていい迷惑なんだ。分かるだろ? あの子とは赤の他人なんだ。頼むよ。

運転手:  いいや、旦那と同じく俺にとっても他人だ。そうだろ?

               旦那は彼女と別れたい、俺だって彼女はいらない。まっぴらごめんだ。
               そうだ、警察に連れていこう。 どうだい?

ジョー:  そのほうがいいかも知れんが …。わかったよ、もう騒ぐな。


(ジョーは万やむをえず彼女を自分のアパートに連れ帰ることにした)

ア ン:  … 光栄ですわ、感謝します。
ジョー:  さあ入って。

ア ン:  これはエレベーターですの?
ジョー:  いいや、ぼくの部屋だ!

ア ン:  ごめんなさい。ちょっと聴いてくださるかしら?
              私の上品な容姿がめちゃくちゃになりそうなの。ちょっと横になるわ。

ジョー:  どうぞ、そうしてくれ。

ア ン:  バラの刺繍をあしらったシルクのネグリジェを用意してくださる?

ジョー:  今夜は我慢してくれ。… これを。

(ジョーはクロゼットの中から男もののパジャマを取り出す)

ア ン:  パジャマね。

ジョー:  悪いが … 家では一年中このパジャマを着てるんだ。

ア ン:  着替えるから手を貸してくださる?

ジョー:  … うん、わかった。 (彼女の首回りのスカーフを解いて)  どうぞ、後はご自分で。

(ジョーはウィスキーに手を伸ばす)

ア ン:  私もいただくわ。
ジョー:  ダメだ。いいかい、君 …。

ア ン:  こんな経験ははじめてよ。ふだんでも男性と二人っきりになるなんて決してないのに。

              たとえ服を着ていたとしてもありえなかったのに、こんどは服を脱いでしまうなんて本当に奇妙きてれつだわ。
              でもいやな気がしないわ。あなたも?

ジョー:  外でコーヒーでも飲んでくるよ。君は寝なさい。おっと待ったこっちじゃない、あっちだ。

(彼女はくらくらと方向を見失ったかのようにベッドに向かって歩いて行く。
ジョーはぐいっと彼女の手を引っ張ってカウチへ押しやる)

ア ン:  お小言の多い方ね、あなたって。

ジョー:  ほら、パジャマはここだ。これに着替えて、今夜はもう寝るんだ。いいね?
ア ン:  ありがとう。

ジョー:  君はこのカウチ(ソファ-)で寝なさい。ベッドやこの椅子はだめだよ、わかるね?

ア ン:  私のいちばん好きな詩を知っていらっしゃる?
ジョー:  詩ならさっき聴いた。

ア ン:  「我、至高の霊魂が住まう山の中にありて、優雅なカウチ(寝椅子)に伏せたる名誉と尊厳とを拒絶する …」 
                これキーツの詩よ。

ジョー:  (キーツではなく)  シェリーの詩だ。詩の朗読はそれくらいにして早く着替えなさい、それで楽になる。

ア ン:  キーツ。
ジョー:  いや、シェリーだ。十分後に戻る。

ア ン:  キーツよ。あなたも下がって休みなさい。

ジョー:  それはどうも。