幕末太陽伝   1957年(昭和32年)       邦画名作選
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明治維新を目前にした江戸の品川。ここに北の吉原と並び称される遊郭があった。

その遊郭の一室で、呑めや歌えの大騒ぎをしている男こそ、主人公佐平次。

この男、実は懐には一文の銭も持ち合わせていないのだが…。



幕末の品川遊郭が舞台。主人公の左平次(フランキー堺)は、仲間と一緒に遊郭でどんちゃん騒ぎを
やったあげく、金はないから居残って働いて返すと申し出る。

仕方がないから下男がわりにこき使うことにすると、この男、気が利くこと気が利くこと、
たちまち女郎たちの面倒をみるマネージャーみたいになってしまう。


この遊郭にもう一組居続けるのは高杉晋作(石原裕次郎)ら勤皇の志士。彼らは、御殿山に
建設中の英国公館を焼き打ちしようと機会を狙っているが、未だ達成できずにいた。

左平次は、彼らの計画を知ると、一儲けできると知恵を巡らす。そして御殿山に出入りしている
大工に公館の絵図面を作らせ、これを高杉らに売り渡すのだった。


こうして高杉らの計画は成功するのだが、天下国家を論じて大きな顔をしている志士たちも、名もない
左平次のような男の協力がなければ、公館の焼き討ちもできなかった、という話のオチになっている。



作品のタイトル「太陽伝」は、当時流行った「太陽族」からの借り物という。古い慣習に反抗して
無鉄砲な行動をとる「太陽族」なんぞ、どの時代にもいるもんさ、ということだろう。


当時の新聞は「石原裕次郎初の時代劇」「マゲを結った太陽族」などとこぞって書き立てたにもかかわらず、
主演には、喜劇俳優のフランキー堺を起用し、日活看板スターはすべて脇役にまわされてしまった。

この件で日活上層部との軋轢があり、結局、川島はこの映画を最後に日活から東宝へ移籍することになった。



    

 製作  日活

  監督  川島雄三

  配役 居残り佐平次 フランキー堺       高杉晋作 石原裕次郎       女房お辰 山岡久乃
  女郎おそめ 左幸子       女中おひさ 芦川いづみ       貸本屋金造 小沢昭一
  女郎こはる 南田洋子       相模屋伝兵衛 金子信雄       久坂玄瑞 小林旭

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