春秋一刀流 1939年(昭和14年) 邦画名作選
凄腕の浪人・平手造酒は、二人の仲間とともに、笹川の繁蔵の用心棒になる。
三人は、用心棒稼業で金をため、将来は道場を開くという、新しい生活を夢見る。
だが、やくざ同士の出入りの中で、仲間は一人また一人と命を落としてゆく。
平手造酒という人物は、酒が原因で千葉道場を破門となり、用心棒稼業に身を堕とし、
最後には、やくざ同士の出入りで非業の死を遂げた剣客である。
その平手造酒の生涯を描いた「天保水滸伝」を題材に、丸根賛太郎が脚本を書いたところ、
脚本を気に入った千恵蔵の後押しにより、丸根の監督デビュー作となった傑作時代劇である。
映画の冒頭で、やくざ同士の出入りが始まるのだが、途中で出入りを抜け出した平手造酒が、
草むらで寝転がっているシーンがある。
悲劇の剣客とされている平手造酒だが、映画では、明朗でユーモラスな人物として描かれる。
平手を演じた千恵蔵は、当時35歳、瑞々しい出で立ちで、豪快な立ち回りを見せている。
また繁蔵の妹・お勢以を演じた轟夕起子は「宮本武蔵」での初共演以来、千恵蔵とは
名コンビを続けており、本作でも平手に心を寄せる恋人役で可憐な姿を披露している。
製作 日活
監督 丸根賛太郎