華麗なる一族  　1974年 （昭和49年）　　　　　邦画名作選

                               

阪神銀行頭取・万俵大介は、子息を次々と政財界の大物と結婚させ、勢力を磐石なものとしていた。

彼は預金高全国第十位の阪神銀行を、有利な条件で他行と合併させるべく着々と準備を進めている。

彼の長男・鉄平は高炉建設に情熱をかたむける阪神特殊鋼の専務である。


だが、高炉の建設は突貫工事を余儀なくされ、やがて爆発事故を招き、阪神特殊鋼は倒産してしまう。

万俵大介は、自らの筋書通り、阪神特殊鋼のサブバンクであった大同銀行の吸収合併に成功する。

一方、鉄平は、自分の会社の倒産が父親の妨害によるものと知るに及び、雪山で猟銃自殺をとげる。



山崎豊子の同名小説を山田信夫が脚色、山本薩夫が映像化した超大作。

大富豪の銀行一族を中心に、政財界にまたがる野望と愛憎を描く社会派ドラマ。

上位行を吸収合併した万俵大介は、預金高第五位に躍り出た新銀行「東洋銀行」の頭取に収まる。
だが時を同じくして、政府は東洋銀行を更に上位行に吸収合併させようと策動を始めていたのだ。


1970年代後半以降、銀行は斜陽産業への道をたどることになる。
その理由は、企業が昔のように銀行から金を借りなくなったからである。

多くの企業は株式で直接、投資家から資金を調達するようになったのだ。
政府介入による銀行合併は、破綻リスクを極力低下させる意向の現れである。

野望に燃える大介もまた、彼の背後にある大きな国家権力の網の中でしか生きられないのであった。



  製作  東宝 

  監督  山本薩夫