宗方姉妹 (むねかたきょうだい) 1950年(昭和25年) 邦画名作選
節子は、失業中の夫を、バーの雇われマダムをして支えている。
妹の満里子は、姉の日記を読んで、田代という恋人がいたことを知る。
田代は、節子の店の資金難を知り、久しぶりに節子の前に姿を見せる。
だが店の資金が、田代から出たことを知った夫の亮助は、節子を殴りつける。
節子は、妹の満里子に、離婚の決意を告げるのだった…。
主人公の節子(田中絹代)は、映画では、一貫して着物姿である。一方、妹の満里子(高峰秀子)は、
洋装であり、戦前の旧習に生きる姉と、戦後の自由主義に生きる妹とを、暗示的に対比させている。
妹は姉の日記を読んでしまったことを告げ、なぜ田代(上原謙)と結婚しなかったのかと問い詰める。
節子は、田代を本当に好きだと気付いた時には、亮助(山村聡)との話が決まっていたのだと答える。
数日後、亮助は節子へ別れ話を持ち出す。「何故」と問う節子へ、亮助は激しい平手打ちを食わせる。
理不尽な暴力を受けた直後、節子は、妹の満里子に夫と別れると告げる。
だがその夜、泥酔して帰宅した亮助は、足元がふらつき、発作で激しく倒れて急死してしまう。
節子は夫の死に、なにか釈然としないものを感じる。
もしかしたら、自分が夫をここまで追い詰めてしまったのではないか、節子は自責の念にかられる。
夫の死に負い目を感じた節子は、田代との再婚を断念するのだった。
映画の中で、小津は古風な節子の生き方に焦点を絞り、姉に反発する妹の対照的な人生を通して、
日本人の価値観の変化を浮き彫りにしようと試みる。
貞節を貫くために、自ら身を引くという節子の姿は、作者大仏次郎の明確な倫理観の現れであり、
戦後の自我の解放だけが現代的だとする軽佻浮薄な時代への、小津自身の率直な抵抗でもあった。
製作 新東宝
監督 小津安二郎